研究実績の概要 |
本研究の目的は研究代表者らが見出したNi-Mn-X (X = In, Sn, Al) 基合金を中心に、低い磁場で磁場誘起変態が発現し、さらに高加工性を有するメタ磁性形状記憶合金を開発し、その応用に向けた試作品を作製することであった。 40Ni-10Co-39Mn-11Sb合金の磁場誘起逆変態の挙動を調査するため、定常およびパルス強磁場下での磁化測定を行った。50K以下の極低温域において、カイネティックアレスト現象により、磁場誘起変態における平衡磁場が一定値になることが確認された。なお、Ni(Co)MnZ (Z = In, Sn, Ga, Al)合金でも同様の現象が確認されている。40Ni-10Co-39Mn-11Sb合金の4.2Kにおける自発磁化は5.4 μB/f.u.であり、これはCoの置換によって4aサイトと4bサイトに位置するMn原子の磁気的相互作用に影響を与えたことが原因と考えられる。 一方、加工性については、結晶粒界の脆弱性に問題のあるNiMnIn合金に対して、粒界強化を目的としてBを添加して改善を試みた。B化合物の多くが粒内に析出し、著しい粒界強化は見られなかった。 特に最終年度は加工性に優れるNiCoMnAl合金に着目し、Ni+Co=50の化学量論断面からずらしたNi+Co=46および48断面におけるマルテンサイト変態温度変化と磁気特性を調査した。NiMnIn3元合金ではNi含有量を化学量論組成から変化させることで変態ヒステリシスが大幅に減少する、という報告を基に実施したが、NiCoMnAl合金では類似の結果は得られなかった。しかし、飽和磁化ΔMやキュリー温度の増加は見られ、Ni+Coの組成比の更なる検討をすることで、特性の向上が期待できると考える。
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