研究課題/領域番号 |
24760587
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業 |
研究代表者 |
岩瀬 裕希 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業, その他部局等, その他 (70391266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中性子小角散乱 / X線小角散乱 / 両親媒性デンドリマー / ヒドロゲル / 機能性高分子材料 |
研究概要 |
今年度は両親媒性デンドリマーが溶液中で形成する会合体について調べた。精密な構造解析を実現するために、中性子小角散乱だけでなく、X線小角散乱測定を実施した。その結果、両親媒性デンドリマーミセル内部の水の定量化やミセルの分子あたりの占有面積の定量化に成功し、両親媒性デンドリマーミセルは、測定した世代1から5までにおいては、いずれも半径3nm程度の球状であることが明らかとなった。また、デンドリマー粒子とは異なり、世代にほとんど依存しないことも明らかとなった。さらに、ミセル構造のpH依存性についても測定を行ない、世代2の両親媒性デンドリマーミセルでは、pHの低下に伴い、スターポリマーと類似した振る舞いを示すのに対して、世代3ではデンドリマー粒子と類似していることが明らかとなった。この研究内容について、国際会議「World Congress on Oleo Science 2012 (WCOS2012)」にて発表を行なった。また、両親媒性デンドリマー分子同士を連結基で結合したジェミニ型両親媒性デンドリマーの水溶液についても測定を実施し、その構造解析をすすめた。さらに、両親媒性デンドリマー含有のヒドロゲルの作製を開始した。 中性子小角散乱の当初の予定では、研究用原子炉(日本原子力研究開発機構所有のJRR-3)に設置された中性子小角散乱装置SANS-Uと大強度陽子加速器施設(J-PARC)に設置された中性子小角散乱装置TAIKANを併用することで、ナノからミクロンにおよぶ広い空間スケールの構造解析を目指したが、JRR-3の稼働の目処が立っていないために、TAIKANでより低Qを計測することを目指すとともに、光散乱を併用することで補うことが可能か検証し、測定の目処を立てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画に対して遅れている点は、中性子小角散乱測定と応力-歪み測定の同時測定を行なうためのセルの作製である。当初、二台の小角散乱装置(研究用原子炉JRR-3に設置されたSANS-U、およびJ-PARCに設置されたTAIKAN)に対して共通の試料セルを想定していたが、JRR-3の停止のために設計を見直した。ただし、平成25年度の前半には完成させることが出来る目処が立っている。 また、計画では平成24年度中に、両親媒性デンドリマー含有ヒドロゲルについて、測定を実施する計画であったが、上記の小角散乱測定と応力-歪み測定の同時測定セルが未完成のために、実施に至らなかった。これについてもセルの完成後、平成25年度中に、平成25年度に予定していた実験とあわせて行なう。この遅れをカバーするために、当初の予定よりも予備実験(X線小角散乱、光散乱、オフラインにおける応力測定)に十分な時間を割くことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度から継続して、ジェミニ型両親媒性デンドリマー水溶液の構造解析、および両親媒性デンドリマー含有ヒドロゲルの作製を進める。ヒドロゲルの作製が成功した後、X線小角散乱と光散乱による予備的な構造解析を進め、中性子小角散乱測定に備える。具体的な実験条件として、両親媒性デンドリマーの世代およびデンドロン数依存性を変えた試料について測定し、最初に溶液中とゲル内の両親媒性デンドリマーミセルの構造を比較検討する。次いで、ゲル網目内のミセル構造に影響が現れるゲルの網目サイズを見積ることを試みる。 また、両親媒性デンドリマー含有ヒドロゲルの応力-歪み特性(力学特性)の測定を実施する。X線小角散乱と光散乱による構造解析の結果と比較検討し、構造と力学特性との関係について検討する。また、過剰延伸によるゲルの破断に先立って起きる前駆的な構造変化の有無を調べる。さらに、小角散乱と応力-歪み特性の同時測定用のセルの製作を完成させ、同時測定を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、中性子小角散乱と応力-歪み特性の同時測定用セルの製作を継続して進める。平成24年度の残額分をそのセルの製作に充てる。また消耗品として、両親媒性デンドリマー含有ヒドロゲルの作製に必要な薬品、デンドリマー粒子、および石英セルをそれぞれ購入する。さらに、旅費として研究成果発表(国内、国外各1回)のために使用する。
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