最初に昨年度に実施したジェミニ型両親媒性デンドリマー(GAD)水溶液の中性子小角散乱(SANS)およびX線小角散乱測定(SAXS)の結果の解析を実施した。特に理論散乱関数を用いたモデル解析を実施した。昨年度の実験により、「両親媒性デンドリマーミセルでは、デンドリマー粒子と異なり、世代を上げてもミセルサイズの大きさは変化しない」が得られていたが、これは、世代を大きくなるにつれて、疎水性尾部のアルキル鎖がコンパクトに系統的に折りたたまられることが明らかになり、その結果、ミセル全体のサイズは一定であるという結論に至った。以上の結果は、国際会議「The 2nd International Symposium on Science at J-PARC 2014 (J-PARC2014)」にて発表を行い、さらにそのプロシーディングにまとめた。 また、両親媒性デンドリマーミセルは、デンドリマー粒子と同様に、比較的世代が大きく、かつ溶媒条件に依存して大きな凝集体を形成することが知られている。凝集体を形成すると溶液中のみならず両親媒性デンドリマーをゲル中に埋め込んだ時においても機能性が低下する。そのため、凝集体の形成抑制が極めて重要となる。本研究において、分子をジェミニ型にすることで克服できることが示唆されたが、直接的に観察するには至っていなかった。そこで、今年度、X線超小角散乱(USAXS)測定を実施した。USAXSの結果、GADは凝集体が形成されないことを直接的に確認できた。また、GADミセルをヒドロゲルに埋め込んだところ、ミセル構造は維持されることも確認できた。GADの機能性をゲル中でも維持していることと考えることができる。
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