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2012 年度 実施状況報告書

超音波を利用した革新的金属接合技術の開発原理

研究課題

研究課題/領域番号 24760590
研究機関東北大学

研究代表者

藤井 啓道  東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70560225)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード超音波接合 / アルミニウム合金 / ステンレス鋼 / 冷間圧延鋼 / 銅 / 再結晶 / せん断変形
研究概要

工業製品の発展や環境問題への対応に伴い,多様な材料に対応した低環境負荷の革新的な接合技術が強く求められている.本研究では,これらの課題を克服できるポテンシャルを秘めた超音波接合に着目した.超音波接合では,プロセス中に表面凹凸の塑性変形,摩耗,塑性流動,変形熱・摩擦熱による再結晶など多くの物理現象が複雑に作用するため,接合メカニズムが十分に理解されず,これまで幅広い工業展開には至っていない.これらの物理現象を系統的に整理・理解することにより,超音波接合の学問体系を構築し,これまでの限界を超越した金属材料接合技術として定着させることを目指す.
本年度は,「6061Al合金-304ステンレス鋼」,「6061Al合金-冷間圧延鋼」,「1050Al合金-銅」の3種類の組み合わせで超音波接合を実施し,いずれの材料においても良好な接合部を得ることに成功した.その後,得られた接合試料の接合強度をせん断引張試験により評価し,接合条件と強度の関係性を明らかにした.与えた接合エネルギーが増加するに従って接合強度は上昇し,接合エネルギーが一定の値以上になると破断場所が接合界面から母材へと変化することが分かった.試料の超音波接合部を電子顕微鏡を用いて結晶学的に解析し,超音波振動によるせん断変形が接合部組織形成と接合特性に重要な役割を果たしていることが明らかになった.特に,接合強度が十分高く引張試験において母材破断をした試料においては,接合中に接合界面近傍において再結晶と原子の拡散が進行し,金属間化合物相が形成されていることが明らかになった.これは,接合中に生じるせん断変形によって形成された高密度の転位領域と変形熱や摩擦熱によって生じる温度上昇に起因していることが実験的に示唆された.以上の現象は,どの材料の組み合わせにおいても観察されており,超音波接合における普遍的な基礎現象であることが分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

金属材料の超音波接合を幅広く工業展開するための学術基盤を構築することを目的として実験を実施し,アルミニウム合金と異種金属材料の組み合わせによる接合では,超音波振動による試料のせん断変形と再結晶,接合界面における金属間化合物の形成が十分な接合強度を得るために重要な役割を果たしていることを明らかにした.これらの現象は,超音波接合において健全な接合部を得るためには,材料の組み合わせに関わらず重要であることが示され,学術基盤を支える1つの重要な基礎物理現象となり得る.本研究で得られているこの知見は,初期の研究計画における「接合試験」,「接合試料のミクロ組織解析」,「接合試料の特性評価」,「接合中の温度測定」に関する実験を総括することにより得られている.以上の実績から,初期目的に対して研究がおおむね順調に進展していると判断する.

今後の研究の推進方策

超音波接合において異種金属材料間で原子の拡散が進行するためには,接合前に存在した金属材料表面の酸化皮膜が超音波振動によって破壊・分断され,活性な新生面同士が直接接触することが重要であると考えられている.そこで,酸化皮膜の厚さが既知のアルマイト処理したアルミニウム合金を用いて超音波接合を実施し,電子顕微鏡法によって接合中の酸化皮膜の挙動を観察する.また,これまで作製した超音波接合試料を用いて接合界面近傍のミクロ組織解析を引き続き実施し,超音波接合における接合界面現象を系統的に明らかにする.

次年度の研究費の使用計画

前年度に引き続き,接合試験,特性評価,接合部微細組織観察を行うため,「材料費」,「試料切断用品」,「試料研磨用品」,「化学薬品」の費用として物品費を14万円計上している.また,溶接・接合分野の国内会議,国際会議における成果発表および調査・情報収集旅費として50万円を計上した.その他の費用として,得られた研究成果を国際学術雑誌に投稿するための費用を6万円計上している.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Recrystallization at bond interface in Al alloy build fabricated by very high power ultrasonic additive manufacturing2012

    • 著者名/発表者名
      H. T. Fujii, S. Shimizu, Y. S. Sato, H. Kokawa, M. R. Sriraman and S. S. Babu
    • 雑誌名

      IIW document

      巻: IX-2406-12 ページ: 1-9

  • [学会発表] Al合金/Cuの異材超音波接合部における微細組織と機械特性2013

    • 著者名/発表者名
      藤井 啓道,後藤 優太,佐藤 裕,粉川 博之
    • 学会等名
      平成25年度溶接学会春季全国大会
    • 発表場所
      学術総合センター,東京
    • 年月日
      20130417-20130419
  • [学会発表] 超音接合を利用した積層造形法における3003および6061Al合金の接合部組織形成過程2012

    • 著者名/発表者名
      清水 早紀,藤井 啓道,佐藤 裕,粉川博之,ラマヌジャム スリラマン,スダルサナム バブ
    • 学会等名
      平成24年度溶接学会秋季全国大会
    • 発表場所
      奈良県文化会館および奈良県商工会議所,奈良
    • 年月日
      20120926-20120928
  • [学会発表] 超音接合を利用したAl合金積層造形法2012

    • 著者名/発表者名
      藤井 啓道,清水 早紀,佐藤 裕,粉川博之,ラマヌジャム スリラマン,スダルサナム バブ
    • 学会等名
      溶接学会東北支部第24回溶接・接合研究会
    • 発表場所
      山形国際ホテル,山形
    • 年月日
      20120720-20120720
  • [学会発表] Recrystallization at bond interface in Al alloy build fabricated by very high power ultrasonic additive manufacturing2012

    • 著者名/発表者名
      H. T. Fujii, S. Shimizu, Y. S. Sato, H. Kokawa, M. R. Sriraman and S. S. Babu
    • 学会等名
      International Institute of Welding (IIW2012)
    • 発表場所
      Denver, USA
    • 年月日
      20120708-20120713
  • [学会発表] 超音波積層造形法におけるAl合金接合部微細組織形成過程2012

    • 著者名/発表者名
      藤井 啓道,清水 早紀,佐藤 裕,粉川博之,ラマヌジャム スリラマン,スダルサナム バブ
    • 学会等名
      第207回溶接冶金研究委員会
    • 発表場所
      キャンパス・イノベーションセンター東京,東京
    • 年月日
      20120518-20120518
  • [学会発表] The effect of thermal cycle on microstructural evolution during very high power ultrasonic additive manufacturing2012

    • 著者名/発表者名
      H. T. Fujii, S. Shimizu, Y. S. Sato, H. Kokawa, M. R. Sriraman and S. S. Babu
    • 学会等名
      The 2nd East Asia Symposium of Welding and Joining (EAST-WJ)
    • 発表場所
      Nara, Japan
    • 年月日
      2012-09-27

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公開日: 2014-07-24  

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