研究課題/領域番号 |
24760596
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
島田 直樹 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10545007)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノファイバー / 静電紡糸 |
研究概要 |
テーラーコーンからの微細繊維形成機構を解明するために、高分子ブレンド材料を紡糸試料として用いて、材料の物性因子が、繊維形成に及ぼす影響を検討した。具体的には、紡糸試料として汎用熱可塑性高分子であるポリL乳酸(PLLA)およびポリプロピレン(PP)を使用した。PLLAとPPとをHAAKE社製MiniLabを用いて溶融混練して任意のブレンド比を有するブレンドシートを作製し、そのシートから紡糸を行うことで、ブレンド構造が繊維形態に及ぼす影響を調べた。 PLLAとPPとのブレンドシートから得られた繊維は、PP単一成分の高分子シートから得られた繊維(平均繊維径5.48μm)単体と比較して細い平均繊維径を有している(平均繊維径3.40~4.54μm)ことが分かったが、PLLA体積含有率が繊維径に及ぼす影響は殆ど見られなかった。また、ブレンドシートから得られた繊維からPLLA成分のみをクロロホルムにより除去し、PP成分のみを観察した。その結果、PLLA体積含有率が50vol%以上の場合において、PLLA体積含有率の増加に伴いPP繊維径が急激に減少する(PLLA体積含有率50vol%:平均繊維径3.98μm、PLLA体積含有率90vol%:平均繊維径0.28μm)ことが分かった。 次に、上記のPLLAをエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)に、PPをエンプラ微粉末 (ポリフェニレンスルフィド)に変えて任意のブレンド比を有するブレンドシートを作製し、そのシートからの紡糸を行った。その結果、PLLAとPPとのブレンドシートにおける結果と同様に、EVOH体積含有率が繊維径に及ぼす影響は殆ど見られなかった(平均繊維径1.7~2.7μm)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PLLAとPPとからなる高分子ブレンド材料から繊維形成を行い、一成分の除去を行うことで、溶融静電紡糸による微細繊維形成が非常に困難なPPから、平均繊維径0.3μm以下のナノファイバーを形成できることが明らかとなった。 PLLA体積含有率がブレンドシートから得られた繊維の繊維径に及ぼす影響は殆ど見られなかったことから、繊維の更なる細径化には、繊維に対して作用する静電的牽引力を大きくすることと、繊維のドラフト延伸を促すことが必要だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
繊維に対して作用する静電的牽引力を大きくするため、高分子シートに対して印加する電圧を高くする必要がある。高電圧印加時には放電が惹起されるため、これを防ぐため高電圧印加部分について改良を行う。 繊維のドラフト延伸を促すため、テーラーコーンから紡出した繊維が急冷により固化してしまうことを防ぐ必要がある。このために、紡糸空間の温度制御を行うことができるように紡糸装置の改良を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
静電的牽引力の増加および紡糸空間の温度制御を行うために、紡糸装置の改良を行う必要がある。このために機械部品費を計上する。 走査型電子顕微鏡の性能維持にはフィラメント等の消耗品を定期的に交換する必要がある。このためのメンテナンス費を計上する。
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