テーラーコーンからの微細繊維形成機構を解明するために、均一成分の高分子シート材料を紡糸試料として用いて、材料の物性因子が、繊維形成に及ぼす影響を検討した。具体的には、紡糸試料としてエンジニアリングプラスチックであるポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用した。PBTはメルトフローレート(MFR)の大きく異なる(MFR=12~175g/10min、250℃)3種類のペレットを使用し、熱プレスにより作製したシートから紡糸を行うことで、高分子シートの溶融粘度および紡糸条件が繊維形態に及ぼす影響を調べた。 実験の結果、MFRが繊維径に及ぼす影響は殆ど見られないことが分かった。しかし、MFRの大きなPBTほど繊維の紡糸量やテーラーコーンの数が増加しており、高分子シートの溶融粘度がテーラーコーンの形成に大きな影響を及ぼすことが分かった。また、テーラーコーンから紡出された繊維が飛翔する空間の温度は繊維径に非常に大きな影響を及ぼし、空間温度が高い場合には非常に細い繊維が形成出来ること(室温で紡糸した場合には平均繊維径4.0μm、285℃で紡糸した場合には平均繊維径2.2μm)が分かった。
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