本研究では、フレキシブルデバイスの高性能化・高機能化技術、また革新的なフレキシブルデバイス創製技術の実現に向けた、フレキシブルデバイス作製プロセスにブレークスルーをもたらす技術開発を念頭に、フレキシブルデバイスの実用化で必須である高品質酸化亜鉛薄膜の低温高速形成技術の開発を目標に、以下の研究を行った。 まず、大気圧非平衡プラズマ支援による酸化亜鉛薄膜形成技術の開発を念頭に、大気圧非平衡プラズマからの高密度・高活性な粒子入射束に対する、ミストとプラズマとの反応を調べる目的で大気圧非平衡プラズマを液体に照射させた際の放電特性を調べた。プラズマ・液体界面における発光測定では、プラズマと液体の表面との距離を変えることによって、生成するラジカル種を制御可能であることが明らかとなり、プラズマと液体との距離を近づけることにより液体(水)の分解反応より生成したOHラジカル強い発光が確認された。この結果は、酸化亜鉛形成に必須の酸化促進に有効な酸化剤(OHラジカル)の供給がミストから供給が可能であることを示唆している。また、ミストに溶解した物質と大気圧非平衡プラズマとの相互作用を調べるため、液体を介してプラズマを照射した際の液体中の有機分子の反応を調べた。プラズマ照射後の水中の有機分子の構造を赤外吸収ならびにX線光電子分光法を用いて調べたところ、分子の酸化反応に加えて分解反応が顕著に生じていることを明らかにした。この結果により、プラズマから気液界面を通して供給されたOHラジカルなどの酸化に寄与するラジカルが、液中への有機分子に影響を与えていることを明らかにした。これらの結果を基に、製膜前駆体を溶解した液滴に大気圧非平衡プラズマを照射して酸化亜鉛薄膜形成を行い、低温での酸化亜鉛薄膜形成を実現した。
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