研究概要 |
本年度は水中アーク法により、(Cu50-Zr50)100-xPdx, x=0-5金属ガラス微粒子の作製を行った。Cu-Zr-Pd母合金はそれぞれの純金属を所定量秤量して、Ar雰囲気中でアーク溶解して作製した。母合金は液体急冷装置(真空鋳造)で銅鋳型に鋳造して棒状(φ3および1, 長さ30mm)の金属ガラス電極を作製した。この電極対を純水中で対向させて、静電蓄勢式放電を加えることで水中アークを発生させた。電極はアーク熱で局所的に溶解し、同時に衝撃で飛散して粒子を形成した。 その結果、粒径が数nmから数μmの微粒子を含む懸濁液を得ることができた。分離、抽出してX線回折を測定した結果、アモルファスとZrO2をはじめとする酸化物の結晶相が混在していることが分かった。更に透過電子顕微鏡(TEM)で観察すると、例えば粒径が50μmの粒子(観察試料は集束イオンビームFIBで加工)の電子回折はアモルファス特有のハーローリングを示したが、粒径が10nmの粒子は酸化物を示す回折を示した。以上からCu-Zr系金属ガラス粒子は、粒径が一定値以下になると表面酸化の影響を無視することができなくなり、実質的にアモルファスを得ることができなくなると推測した。金属ガラスの粒子を得ることができる最小の粒径は組成、純度、その他の作製条件などで大きく変化すると思われるが、本研究で作製した金属ガラス(Cu50-Zr50)100-xPdx, x=1についてのしきい値はおおよそ1μmであると評価した。 Cu-Zr-Pd金属ガラス電極の摩耗重量に対する回収した粒子の収率は90%であったが、今後は粒径の制御に加え、十分な量の粒子を得ることも課題になると思われる。また電極が加熱により結晶化して破損したり、また電極同士が過冷却液体接合してアーク放電が持続しなくなるなど、液中アーク法における金属ガラス電極特有の問題も明らかになった。
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