水中アーク放電の電極構造の見直しを行い、Pd40Cu30Ni10P20および(Cu50-Zr50)100-xPdxアモルファス合金微粒子の作製を行った。 当初は上下電極にφ3mmのWおよびアモルファス合金電極を用いて実験を行っていたが定常的にアモルファス微粒子を得ることができなかった。生成した粒子には微量のWが含まれており、それがアモルファス形成の妨げになっていることが分かった。そこでWの混入を防止するために上下電極ともアモルファス合金のみで構成して微粒子合成を試みた。電極はφ3mmの上部電極とφ1mmの下部電極の対で構成し、さらに上部電極はφ11mmの石英ガラス管で囲いその間隙にArガスを流通させながら水中放電実験を行った。これにより細い下部電極を選択的に消耗させることができた。またガスの流れに沿って飛散した溶湯が逐次純水中に排出されるため電極同士が溶接されなくなり放電を継続することが可能になった。 得られたPd40Cu30Ni10P20微粒子の粒径分布は5μm中心に1μm以下から15μmまで分布していた。TEM(透過電子顕微鏡)およびSEM (走査電子顕微鏡)で観察すると、100 nm以下の(ナノ)粒子と、5 μm程度の扁平した(ミクロンサイズ)粒子が2極化して混在していた。電子回折では一部に未知の回折スポットが重なるが概ねアモルファス特有のハーローリングが観察された。EDSで組成分析すると母合金と比較してPdが10%程度減少していた。これはPdの融点が他の合金元素よりも高く蒸気圧が低いことを反映している。つまりナノ粒子は合金電極が蒸発気化してから急冷されて凝集して生成したものと推測される。一方でミクロンサイズの粒子については、電極との組成差は観察されなかった。これは気化せずに溶融した合金が、衝撃で細分化されて粒子化したものと考えられる。
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