研究課題/領域番号 |
24760600
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野村 和史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90397729)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 溶接 / アークプラズマ / 温度計測 / トモグラフィ / 三次元 / 非軸対称 / 発光分光法 |
研究概要 |
本研究は,非軸対称アークプラズマの三次元的な温度分布測定を目的としている.そのためには発光分光法を用いるが,多方向計測と画像再構成法によるトモグラフィー技術が必要である.多方向計測手法として1つのCCDカメラによる回転光学系を構築し,再構成法としては逐次近似法の一つ,ML-EM法を採用した. 本年度はまず本装置による計測法の改良を行った.適切な検出方向を検討するため,数仮想データに対する再構成結果を行い,検出方向数:6,ML-EM法繰り返し回数:20で,NMSE(誤差評価方法の一つ)の精度が5×103以下の再構成が可能であることがわかった.また,同様の研究で多用されている再構成法のART法系との比較を行い,Ml-EM法の優位性を確認した. この手法を用いて2電極TIGアークプラズマの温度分布を3次元的に計測した.2電極TIGアークの,傾きつつ引き合い,一つになった複雑な温度分布を計測することができた.結果によると,2電極TIGにおけるアーク内の最大温度は電流比によらず,さらに総電流値の低い単電極に比べて最大温度が低下することが示された. 以上のことなどを米国で行われた国際会議IIWや国内の学会・報告会などで発表し,論文を投稿した. また,多点同時計測装置(後述)も構築中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,昨年度実施予定であった,適切な再構成手法の明確化,2電極TIGアークプラズマに関する分光計測はほぼ完遂できた. さらに本年度実施予定であった多点同時計測手法に対しても構築中であり,いくつか知見を得ている状態である.多点同時計測では,複数の検出器を用いることになるが,各検出器やフィルタはそれぞれ微妙に異なる特性を持っており,これを統一させる必要がある(1つの検出器を用いる回転光学系は,この必要がないところが最大のメリットであった).そこで,フィルタの波長分光特性の実測や,これを較正するための傾斜冶具の作製などは既に実施済みである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施予定の多点同時計測手法の構築を引き続き推進する.現状の回転光学系では1つの検出器が現象の周囲を回転することで多方向からの輝度分布を得る.すなわち,検出器が回転している間は,理想的には現象が定常状態である必要がある.そこで,これを多点で同時に計測することで,現象のより正確な計測,さらには時間変化するアークについても展開が可能であると考えられる.これが多点同時計測である.前年度の研究結果より導いた必要な投影方向数(=検出器数)を元に,現在デジタルカメラを用いた装置体系を構築済みであるが,時間分解能の向上を図る必要がある.また,各検出器やフィルタの感度の調査,較正方法については既に知見を得たため,これが適用可能な装置構成となるべく,異なる検出器を用いて更に発展させる予定である. もう一点は,T字継手上のアークの計測である.平板上の磁気制御アークや2電極アークの計測と異なり,T字継手では反射の問題が生じる.本手法では光学的に薄いプラズマを想定するため,T字継手の場合,検出器には意図しない反射成分が含まれると考えられる.そこでまず,検出器側に偏光フィルタを適用し,反射の影響を少なくすることを試みるほか,ある反射率を想定して反射成分も積分した状態で画像再構成を行う,反射を考慮に入れた対策を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品としては,主に多点同時計測装置における新たな検出器を導入する経費が必要である. その他,溶接実験に伴う冶具系統の作製や各種消耗品,国際会議や国内学会への旅費・参加費が必要である.
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