本年度は,レーザ溶接における溶接速度が溶接凝固現象や割れ感受性に及ぼす影響を検討した.従来より溶接高温割れ感受性を検討する際に用いられてきたトランスバレストレイン試験や,解析計算により高速溶接中の凝固現象の検討を行った. 凝固割れ感受性の指標のひとつである凝固脆性温度範囲(BTR)の導出を目的とし,レーザ溶接バレストレイン試験法の開発と,本試験による溶接高温割れ感受性の評価を行った.試験法の開発においては,ひずみ負荷時期の高精度な制御,浸漬型光ファイバ温度計を用いることにより,レーザ溶接中の高速な凝固においても割れ感受性が評価可能であることを見い出した.この方法を用いて,溶接速度を0.2~2.0m/minと変化させて,高温割れ感受性評価を行ったところ,溶接速度が早いほど凝固脆性温度範囲は大きくなる傾向があり,割れ感受性が増大することがわかった.また,昨年度求めた割れ発生ひずみ値と,本年度求めた凝固脆性温度範囲とを用いることにより,従来にない高精度な高温延性曲線が得られ,これを用いることにより高精度な割れ発生予測が可能となると考えられる. 解析計算による溶接中の凝固現象の調査においては,熱力学データベースを連成したフェーズフィールド法により,実験で得られた各溶接速度での冷却速度に対して解析を実施した.その結果,溶接速度の増大とともにデンドライト2次枝の成長形態が変化することがわかった.しかしながら,冷却速度の増大に伴い,分配係数などデータベースの信頼性が低下する場合があったため,今後データベースを改善しながら計算モデルの高制度化を図っていく必要が示唆された.また,より広範囲かつ相の成長方位等を考慮した実現象に近い形態での解析を行うことで,溶接条件や化学成分に応じた凝固現象の変化や,凝固割れ感受性への影響などをより詳細に評価できる可能性が示唆された.
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