研究課題/領域番号 |
24760605
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
佐々木 泰祐 独立行政法人物質・材料研究機構, 磁性材料ユニット, 研究員 (30615993)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 時効析出 |
研究概要 |
本研究は、成形加工性と優れた強度特性を両立し、輸送機器の構造材料として使えるマグネシウム合金を開発することを最終的な目標としている。特に、平成24年度は、優れた時効硬化性を発現する新規合金の開発を行うことを目的として、高融点析出相と低融点析出相の2種類の析出物が析出する合金の探索を行った。さらに、微量添加元素の時効硬化性への影響について調査した。 平成24年度の成果として、高融点の析出相であるMg2Sn相と、低融点の析出相であるMgZn2相の2種の相が析出するMg-1.2Sn-1.7Zn-2.0Al合金を開発した。開発合金のピーク硬度は80HV程度であり、また、ピーク時効に達するまでに100時間程度を要する。そこで、予備調査として、Mg-2.2Sn-0.5Zn-3.0Al合金にNaを微量添加した合金を作成し、1)高融点相の析出挙動の大幅な加速、2)時効による40~50 VHN 程度の硬度増加により、100VHN程度のピーク硬度に達することを確認した。最終的に、NaをMg-1.2Sn-1.7Zn-2.0Al合金にNaを微量添加することにより、100VHN程度のピーク硬度が得られる合金の開発に成功した。 また、平成25年度における調査項目である合金の加工・熱処理プロセスについても、Mg-1.2Sn-1.7Zn-2.0Al合金を用いて一部先行調査を始めた。通常、時効析出型マグネシウム合金の押出加工は溶体化処理後の試料について行うが、この場合、未再結晶粒と、動的再結晶粒組織の混在した組織が得られる。そこで、時効した後に押出加工をすると、均一な再結晶粒組織からなる押出材を得る事ができた。このような均一な微細組織を形成することで、引張・圧縮耐力比を1に近づけ、かつ力学特性のdirectional anisotropyを大幅に低下させる事を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目的とした、高融点相と低融点相が析出する時効析出型合金の開発、および、開発合金に優れた時効硬化性を付与は達成できた。 しかし、先行調査の結果、開発合金を押出加工しても、最終的に目的とする力学特性を得る事は難しく、開発合金の組成を最適化させる必要があることが判明した。既に合金元素、および組成を最適化した合金を開発し、その押出加工に着手しており、目標とする特性発現しうる合金の開発ができる目途が立ちつつある。 よって、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は当初の計画の通り、時効硬化型合金の展伸加工プロセスの設計を行い、優れた強度、成形性を有する展伸マグネシウム合金を開発する。 まず、大型の鋳塊を溶製し、成形加工が可能なランダム配向した結晶粒より構成される組織の形成、および時効による強化を行う。 押出加工は、溶製した鋳塊に、溶体化処理を施して単相組織を得た後、高融点の析出相が溶体化される温度より低温で行う。高融点の析出相が動的に析出し、微細かつランダムに配向した組織を創り込む。 押出加工後の溶体化処理により、動的に析出した高融点相を固溶させ、ランダム配向した粗大結晶粒よりなる単相組織を得る。溶体化処理後の試料について、引張、圧縮試験により、成形加工の可能性を簡易評価し、成形加工ができる可能性がある試料については、曲げ試験などにより成形加工性を評価する。 最後に、時効処理を成形加工後の試料に行い、高い強度を付与する。T5(成形加工後に時効処理)、又はT6 処理(成形加工後に再溶体化処理と時効処理)を施す。時効処理は、合金探索の結果得られた最適な方法で行い、T6 処理の際の溶体化処理は、強度特性の低下を招く結晶粒の成長を最小限に抑制する為に短時間で行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、当初計画していた国際学会に参加しなかった為である。 平成25年度は、招待講演を依頼されたため、予定よりも1回多く国際学会に参加することになっている。従って、繰越分は、25年度分として請求した旅費に加えることで使用する。
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