本研究の最終目標は、優れた加工性と強度を有する展伸マグネシウム合金の開発である。平成24年度に、高融点の析出相であるMg2Sn相と、低融点の析出相であるMgZn2相の2種の相が析出するMg-5.4Sn-4.3Zn-2.0Al(TZA542)合金を開発し、更にNaを微量添加する事で、著しい時効硬化を発現させることができることを見出した。 平成25年度は、開発合金の展伸加工、及び組織・特性の評価を行った。まず、前年度に開発したTZA542-0.1Na合金押出材を作製し、組織と特性の評価を行った。押出後にT6時効を行うことで0.2%耐力が240MPaから347MPaまで大きく増加する。この強度増加の要因は、時効初期に析出物の核形成サイトとなるSn-Naクラスタが形成され、微細なナノ析出物を分散させることができたためである。しかし、Naが結晶粒界に偏析するために、延性が著しく損なわれる。従って、延性改善に向けた組成、熱処理過程の最適化が必要となった。 そこで、Naに代え、Znを過剰に添加したTZA562合金(Mg-5.4Sn-6.2Zn-2.0Al合金)の押出材を作製し、溶体化処理後に2段時効を施した。低温で行った一段目の時効中に、Sn-Naクラスタに代わるZn-richクラスタが形成され、微細な析出物を分散させることができ、Na添加合金と同様に著しい時効硬化を示した。その結果、時効処理により、0.2%耐力は240MPaから350MPaまで上昇した。また、優れた強度を示す時効処理材においても、15%程度の比較的大きな破断伸びを示した。 本研究で開発した、析出強化型マグネシウム合金押出材は、展伸加工後の溶体化処理によって軟化させた状態で最終形状に加工し、その後時効により強化できる。このため、優れた加工性と強度特性を有する合金として有望である。
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