研究課題/領域番号 |
24760607
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
丹下 将克 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (10533458)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポリマーラッピング / 構造選別 / カーボンナノチューブ複合体 |
研究概要 |
カーボンナノチューブは、異種分子を内包できる内部空間を有しており、その空間に内包された異種分子の配列に起因して、特異な現象が発現する可能性を秘めている。しかし、カーボンナノチューブには様々なチューブ構造(直径およびラッピング角)が存在し、その構造によって、電気的特性が変化するだけでなく、内包された異種分子の配列が変化する。そこで、特定の構造をもったカーボンナノチューブを抽出する技術が重要となる。特に、他の分子を容易に内包できる直径を有するカーボンナノチューブを構造選別する技術はカーボン系コンポジット材料の開発において有用である。 本研究では、ピリジン・フルオレン交互コポリマー(PFOPy)とカーボンナノチューブの混合溶液を超遠心分離することにより、特定の半導体カーボンナノチューブとPFOPy間の相対的に強いπ-π相互作用を通じて、様々な構造を有するカーボンナノチューブ材料から直径約1.3nmの半導体カーボンナノチューブを上澄み溶液に選り分けることに成功した。そして、この抽出されたカーボンナノチューブは、伝送損失の少ない波長領域である1500nm付近で発光する。また、半導体カーボンナノチューブに対して顕著な構造選択性を示すポリマーと選択性を示さないポリマーの間で、それぞれのポリマーにラップされた(包まれた)半導体カーボンナノチューブの発光ピーク波長を比較した。その結果、PFOPyでラップされたカーボンナノチューブの中で、特定のチューブ構造をもったカーボンナノチューブが、他の抽出されたカーボンナノチューブと異なる傾向をもった発光ピークのエネルギーシフトを示すことを明らかにした。この発光ピークのエネルギーシフトは、ラップしているポリマーによってカーボンナノチューブに歪が加わった場合のエネルギーシフトの傾向と一致し、PFOPyの主鎖骨格の波状形状を考慮することで解釈できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PFOPyは、さらに大きな直径の半導体カーボンナノチューブを構造選別できるフルオレン・ベンゾチアジアゾール交互コポリマーや比較的直径の小さな半導体カーボンナノチューブを構造選別できるポリフルオレンと比較して、中間的な直径をもったカーボンナノチューブに有効な構造選別能力を有するポリマーである。このPFOPyの構造選別能力の発見により、ポリマーラッピング技術をより広範囲の直径のカーボンナノチューブに適用できるようになった。また、PFOPyが顕著な構造選別能力を示すだけでなく、直径分布の狭い半導体カーボンナノチューブを抽出できる能力も併せ持つことは、PFOPyの特徴的な主鎖骨格形状に起因する。これは今後のポリマーラッピング技術の進展のための大きな知見となる。さらに、フラーレンのような有機分子を内包した物質内包型カーボンナノチューブにおいても、ポリマーラッピングによってチューブ構造の選別ができることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
分子配列に依存した発光特性を示すような有機物質をカーボンナノチューブに内包する。これまでに明らかにしたポリマーラッピングに関する知見を利用して、カーボンナノチューブに閉じ込められた特定の有機分子配列を得るために、カーボンナノチューブの構造選別を行う。得られた物質内包型カーボンナノチューブを用いて、特異な光学的特性を創出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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