研究課題/領域番号 |
24760612
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹田 修 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60447141)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | レアアース / リサイクル / 磁石 |
研究概要 |
世界最強の永久磁石であるNd-Fe-B系磁石には、希土類元素(レアアース)のネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)が使用されているが、その素材生産は中国に独占されている。そのため資源の供給が不安定であり、近年は供給が一時停止するなどの問題が発生している。そこで、報告者らは、磁石廃棄物中のNdやDyを効率よく再資源化するプロセスの開発を行っている。その方法は、磁石廃棄物に弗化物を混合、溶融して、廃棄物中の不純物(特に酸素)を抽出除去するというものである。 このリサイクルプロセスを実用化するためには、酸素の除去限界を見積もる必要がある。そのためには、希土類元素(Ln)のオキシフルオライド(LnOxFy)の高温での熱力学特性、特に標準生成ギブズエネルギー変化の情報が必要である。しかし、希土類のオキシフルオライドの熱力学的な研究はこれまでに皆無であった。そこで、本研究では、LnOxFyの熱力学諸量を測定・決定することを目的とした。 これまでに、既に、起電力法によりLnOxFyの標準生成ギブズエネルギー変化を決定する試みを行ってきたが、得られる起電力が安定しなかった。そこで、実験手法の改良を行うとともに、NdOF、DyOFおよびLaOF(La:ランタン)の標準生成ギブズエネルギー変化を決定した。その結果、NdOFの標準生成ギブズエネルギー変化の温度依存性は、過去の報告とよく一致した。また、これまで報告例のない、DyOFおよびLaOFの標準生成ギブズエネルギー変化を確定することができた。これらのオキシフルオライドは、希土類元素の原子量が増大するほど(希土類イオンのイオン半径が減少するほど)、化学的に安定になる(ギブズエネルギー変化が低下する)ことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、希土類元素のうち、軽希土類(La、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム))の標準生成ギブズエネルギー変化を決定する予定であった。しかし、まずはイオン半径が顕著に異なるLa、Nd、Dyを測定することで、イオン半径の減少に伴うギブズエネルギー変化の傾向を、ランタノイド全体で把握することにした。結果的に、軽希土類としてLaおよびNdのオキシフルオライドの標準生成ギブズエネルギー変化を決定することができた。さらに、重希土としてDyのギブズエネルギー変化も決定できた。当初の計画から考えると、達成度は80%程度である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度に確立した手法によって、軽希土類として、Ce、Pr、Sm、重希土としてガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、イットリウム(Y)のオキシフルオライドの研究に展開する。前年度と同様に高温での平衡関係を確認した後、標準生成ギブズエネルギーを決定する。全ての元素の結果を元に、測定の正確性(不確かさ)を推定し、希土類酸化物の共通特性と対比してオキシフルオライドの共通特性を明らかにする。そして、申請者が開発したリサイクルプロセスの熱力学的な精製限界を算出する。さらに、これまで検討対象としてこなかった希土類に関しても同様のプロセスで再資源化が可能か、あるいは別の処理法の方が適切か、適切な処理のシナリオを提言する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度で、電気炉等の基盤的な装置や反応容器等、多くの装置を設計・製作し、かなりの部分が揃った。しかし、反応容器は実験によって消耗するため、新たに装置の製作を行う。装置の設計は申請者が行い、資材を購入して学内の技術部(制作室)で製作する。そのため、消耗品への予算の分配が多くなっている。示差熱分析計については、外部機関の装置を借りることで対応する予定である。さらに、本研究で検討する温度域(800~1200℃)に適する特殊な耐熱ステンレス鋼(SUS 310S)製容器と高純度アルミナ製容器、石英硝子セルを設計・自作する予定であり、その素材も購入する。
|