研究課題/領域番号 |
24760613
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野瀬 勝弘 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50572476)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | イリジウム / 溶融塩電解 / レアメタル / 白金族金属 / 貴金属 |
研究概要 |
電極として使用するイリジウムや電気化学測定に必要となる専用の電解セル等の各種実験装置を準備した。使用する電解セルはステンレス管の溶接および金属切削加工によって作製した。また、雰囲気を不活性にするガス配管は塩化物ガスや塩酸にも耐えうる耐食性のガス配管を専用に組んだ。溶融塩を利用するプロセスでは、溶融塩に含まれる水分や酸素がアノードの挙動に大きく影響を及ぼすことが知られており、あらかじめ十分な精製を行う必要がある。本研究で使用する塩化ナトリウムと塩化カリウムの共晶溶融塩の精製条件を検討した結果、アルゴン雰囲気下で1000 Kで約1時間、定電流電解をすることにより水や酸素などの不純物を除去できることが分かった。また、高温溶融塩中で長時間安定して作動する参照電極として、塩化ナトリウム‐塩化カリウム溶融中での銀‐塩化銀平衡が有効であることが分かった。 1000 Kの塩化ナトリウム‐塩化カリウム溶融中でイリジウム線を作用電極としてサイクリックボルタンメトリー測定を行い、イリジウムの溶解電位およびアノード挙動の調査を行った。これまで、700 K程度の塩化リチウム‐塩化カリウム溶融塩中での白金族金属のサイクリックボルタンメトリー測定において、酸化物または塩化物の被膜形成による電極表面の不動態化挙動が報告されていた。しかし、本研究で実施した高温下で溶融塩電解を行う条件ではイリジウム電極の不動態化は生じないことが明らかとなった。これは、高温で電解を行うことにより、塩化物被膜が不安定になり生成しない、もしくは、イリジウム塩化物の溶融塩中への溶解度が高くなるためと考えられる。これらの実験から、高温溶融塩中でのアノード溶解を利用することでイリジウムを電気化学的に迅速に溶解することが可能であることが実験的に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度となる平成24年度は特殊ガス配管や高温溶融塩用電気化学セル、参照電極やイリジウム電極等の各種電極の作製をはじめとした実験に必要となる装置類の組み立てを行った。代表者が所属している研究室には高温溶融塩を用いる実験ノウハウが蓄積されていることもあり、順調に装置をくみ上げることが出来た。イリジウムの塩化ナトリウム‐塩化カリウム共晶溶融塩中での1000 Kでの電極挙動をサイクリックボルタンメトリーにより明らかにすることができており、さらに、当初の研究計画通りに従来よりも迅速に溶解できることを確認していることから、本研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにイリジウムが塩化ナトリウム‐塩化カリウム共晶溶融塩中に電気化学的手法によって迅速に溶解することが実験的に確かめられた。また、イリジウムのアノード溶解電位も測定された。しかし、観測された電位は見かけの溶解電位であり、実際には溶融塩や電極による電圧降下が含まれており、それらを指し引いて真のアノード溶解電位となる。今後は、溶液抵抗等をインピーダンス測定等の手法を用いて調査し、正確なアノード溶解電位を調査する予定である。電気化学的に金属を溶解するプロセスでは電流効率が極めて重要となる。イリジウムの定電位電解における電流効率を消費電気量と溶解による質量損失から評価を行う。溶融塩中でのイリジウムの溶解価数の調査も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ステンレス製フランジ付反応管の部材、ガラス器具、イリジウム線、貴金属線、電極材料等の実験遂行に必要な消耗品を購入する。高温溶融塩電解の電気化学測定専用特殊セルを作製する。国内および海外の学会等で当該研究成果を発表するための旅費、および高温電気化学の有識者らと研究討議のための旅費として研究経費を使用する予定である。
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