研究課題/領域番号 |
24760615
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安田 幸司 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20533665)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シリコン / 還元 / カルシウム / 水素化物 / 酸化物 |
研究概要 |
本研究では、シリコン酸化物からのシリコン生成反応時に、精製効果を同時に得ることができるプロセスを構築することを目的とした研究を行った。当該年度においては、実験ノウハウの構築と、カルシウムハイドライド(CaH2)を還元剤に用いた実験を行った。 (1)金属ハイドライドによるシリカの還元工程 CaH2とSiO2の混合粉末をペレット化し、高温で反応を行った。示差熱熱重量同時測定(DTA/TG)の結果により、反応が850℃付近より開始することを見出した。熱力学計算の結果から、還元反応が起こると、系内の温度は最高2700℃程度に達し、シリコンと副生成物酸化物をともに融解させることが、理論的に可能であることを見出した。還元反応に関しては、900℃では反応速度が小さく不十分であり、1100℃で十分に速いことを見出した。原料混合比を変えて実験を行った結果から、SiO2に対するCaH2のモル比が1.0の時に一番収率が良いことが見出され、熱力学計算の結果と一致することを確認した。また、1100℃でモル比1.0で反応を行うと、平滑な表面性状を有する粒が回収され、生成したシリコンの一部が反応中に融解していることを確認した。これらをもとに、次年度でより効率的に融解シリコンを生成するための条件を設定することができた。 (2)生成物の酸浸出工程 還元試験で得られたサンプルに対する、酸浸出処理条件の確立を行った。得られた試料を重量測定、X線回折(XRD)、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP-AES)で分析し、混合物として得られる反応生成物からシリコンのみを分離する手法を確立した。その結果、シリコンを単離するためには、酸浸出工程を、1.塩酸(HCl)で24時間、2.フッ化水素酸(HF)で48時間、の2段階溶解を行うのが良いことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究予定と比較すると、融解シリコンを効率よく得ることができる条件の探査については順調に進展している。そのため、平成25年度に実施予定であった、シリコン粒を走査電子顕微鏡(SEM)で観察することで、粒度の大きさや表面性状から液体シリコンの融解を確認する項目については、当該年度において前倒しで実施することができた。そのため、還元過程の研究に関しては、次年度においてもより順調に進むことが見込まれる。 一方、生成したシリコンをICPなどで純度評価する項目については、分析手法の確立が不十分で遅れ気味である。当該年度でICP用部品を購入したものの、活用することができていない。 酸浸出工程に関しては、当初の予定通りに進展し、混合物からシリコンを単離する手法の確立を行うことができた。ICPの評価手法を確立したのちは、浸出液中の不純物量などに関して、次年度において予定通りシリコンの純度や不純物移行を評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後においては、生成したシリコンの純度を評価する方法の確立を第一に行う。生成シリコンが融解状態である場合とそうでない場合とにおいて、シリコンの純度がどのように違うかを比較し、本プロセスによる精製効果の有意性について評価を行う。具体的には、酸浸出工程の、各々の段階での固体サンプル重量や浸出液中イオン濃度から、各成分(特に不純物成分)の移行を解析する予定である。 加えて、還元工程に関しても、反応重量、粉末粒度、昇温速度、系内圧力などをパラメータとして調査することで、より高速な反応や、融解状態の容易な達成を狙いとした研究を進める。 最終年度においては、カルシウムハイドライド(CaH2)以外の金属水素化物を用いた試験を行い、高純度シリコンを得るためのより広い条件の探査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当年度の成果によって、反応物質重量を増加させることで、より効率的に融解状態を達成できる可能性があることが見出された。そのため、現在新しく大型の装置を設計中である。本年度に使用予定であった研究費の一部を用いることで、大型の装置を次年度に製作して実験に用いる予定である。
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