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2012 年度 実施状況報告書

プロトン伝導性酸化物の結晶粒界伝導メカニズム解明のための分析法の確立および応用

研究課題

研究課題/領域番号 24760616
研究機関京都大学

研究代表者

今宿 晋  京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40606620)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード材料分析 / 希土類元素 / カソードルミネッセンス / プロトン伝導体
研究概要

イットリウム(Y)をドープしたバリウムジルコネート(BaZrO3)の結晶粒界抵抗と結晶粒界近傍の組成との関係を調べるために、まずカソードルミネッセンス(CL)現象を利用したYの定量分析のためのデータ収集を行った。Y濃度が異なるBaZrO3を走査型電子顕微鏡(SEM)に小型分光器を付加させてCL測定したところ、Y濃度の違いによるスペクトルの変化は見られなかった。そのため、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、Yを15%ドープしたBaZrO3の結晶粒界近傍の組成分析を行った。結果、結晶粒界近傍のY濃度が若干高いことがわかった。
また、カソードルミネッセンス現象を利用して、希土類鉱石中に微量含まれる希土類元素の定性分析を行うための小型装置の作製を行った。電子源には3×3×5 mmの焦電結晶をUSBで駆動する小型分光器を用いたため、ポータブルの装置にすることができた。この装置を用いて、希土類鉱石であるジルコンを分析したところ、数~数百 ppm含まれる希土類元素(Sm, Tm, Dy, Er)を検出することができた。現在、鉱山で希土類鉱石をその場分析する際は、携帯用の蛍光X線装置が用いられている。希土類鉱石には人工核種を除くほとんどすべての希土類元素が含まれている.そのため,希土類鉱石を蛍光X線装置で分析した場合,共存する希土類元素の蛍光X線が互いに重なってしまい,希土類元素を正確に検出することが非常に難しい.一方,今回製作した装置は、内核の電子の励起によって発生するX線を分析する蛍光X線分析と原理が異なり,外殻の電子の励起によって発生する可視光を分析するため,蛍光X線のような問題は起こらない.したがって、今回製作した装置は鉱石中の希土類の検出に関しては従来の携帯用蛍光X線装置に代わる装置として普及することが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

カソードルミネッセンス現象を利用して、イットリウム(Y)をドープしたバリウムジルコネート(BaZrO3)の組成分析については、Y濃度の違いによるスペクトルの変化が見られなかったため、困難であることがわかった。しかし、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、YをドープしたBaZrO3の結晶粒界近傍の組成分析が行うことができることがわかった。YをドープしたBaZrO3の結晶粒界近傍の組成分析に関しては、当初の予定より少し遅れている。
一方、カソードルミネッセンス現象を利用した鉱石中の希土類元素の分析については、小型装置でppmレベルで含まれる希土類元素の検出に成功したことから、当初の計画を超える成果を得ることができたと言える。
以上の成果より、本研究は現在のところおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後は以下の2つの研究の研究を並行して行う。
1. YをドープしたBaZrO3の結晶粒界近傍の組成と結晶粒界抵抗の関係の解明
CL測定ではYをドープしたBaZrO3の定量分析を行うことができなかったため、TEM-EDXによる結晶粒界近傍の組成分析結果について詳細に解析を行い、結晶粒界近傍の組成が化学量論比からずれている証拠を見つける。その後、結晶粒界の電気伝導度を測定する。Y濃度を変化させた試料について同様の測定を行い、結晶粒界近傍の組成のずれと結晶粒界抵抗の関係について調査する。
2. CL現象を利用した微小領域における希土類元素分析法の確立
これまで製作した小型CL装置の電子線はミリメートルオーダーの領域に照射されており、また検出器には分光器を用いているため、位置に関する情報が失われている。そこで、次の研究段階として微小領域分析が行えるようにする。具体的には、①焦電結晶上に針を立てて電子線を集束させるおよび②検出器をCCDカメラにするという二つのアプローチから小型CL装置の微小領域分析を達成する。

次年度の研究費の使用計画

YをドープしたBaZrO3の合成のために高純度試薬およびセラミック製品の購入に150千円使用予定。YをドープしたBaZrO3の電気伝導度測定に使用する高純度ガス (アルゴン、酸素)の購入に100千円使用予定。焦電結晶用の針のコーティング用の真空蒸着装置部品(膜厚測定器)(400千円)を購入予定。小型CL装置の真空部品に100千円使用予定。海外(2回)および国内出張費(4回)に650千円使用予定。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 小型カソードルミネッセンス装置2013

    • 著者名/発表者名
      今宿 晋
    • 雑誌名

      光アライアンス

      巻: 24 ページ: 36-38

  • [学会発表] 今宿 晋、今西 朗、花咲 晃平、河合 潤2013

    • 著者名/発表者名
      手のひらEPMA-CLにおける電子線の集束および同時元素マッピング
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第165回春季講演大会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] 今宿 晋、今西 朗、河合 潤2012

    • 著者名/発表者名
      焦電結晶とクイックカップリングを用いた小型EPMAの製作
    • 学会等名
      第28回PIXEシンポジウム
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      20121107-20121109
  • [学会発表] 今宿 晋、冬野 直人、河合 潤2012

    • 著者名/発表者名
      カソードルミネッセンス法を利用した酸化物中の希土類元素の分析
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第164回秋季講演大会
    • 発表場所
      松山市
    • 年月日
      20120917-20120919
  • [学会発表] 大西 庸礼、今宿 晋、河合 潤2012

    • 著者名/発表者名
      焦電X 線管中における浮遊電荷の運動メカニズム
    • 学会等名
      資源・素材2012
    • 発表場所
      秋田
    • 年月日
      20120911-20120913
  • [学会発表] Application of pyroelectric crystal to metal ion beam2012

    • 著者名/発表者名
      Susumu Imashuku, Akira Imanishi and Jun Kawai
    • 学会等名
      22nd International Conference on the Application of Accelerators in Research and Industry (CAARI 2012)
    • 発表場所
      アメリカ合衆国、フォートワース
    • 年月日
      20120805-20120810
    • 招待講演
  • [産業財産権] 元素分析装置2012

    • 発明者名
      今宿晋、冬野直人、河合潤
    • 権利者名
      今宿晋、冬野直人、河合潤
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2012-164968
    • 出願年月日
      2012-07-25

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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