研究概要 |
プロトン伝導体である希土類元素をドープしたバリウムジルコネート(BaZrO3)は、結晶粒界と結晶粒内で希土類元素の濃度が異なり、これが原因で結晶粒界のプロトン伝導率が大きく減少していると考えられている。しかし、未だ結晶粒界と結晶粒内の希土類元素の濃度が異なることは確かめられていない。そこで、本研究では、希土類元素をドープしたBaZrO3の結晶粒界と結晶粒内における組成の違いを分析する手法の確立およびその手法の応用を目指した。分析には電子線を希土類元素を含む試料に照射した際に可視光が発生するカソードルミネッセンス(CL)現象を利用した。イットリウム(Y)濃度が異なるBaZrO3をCL測定したところ、結晶粒界と結晶粒内で得られた可視光スペクトルには変化は見られず、結晶粒界と結晶粒内では結晶構造の違いはないことがわかった。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたところ、結晶粒界近傍のY濃度が若干高いことがわかった。 また、CL現象を利用して、鉱石中に微量含まれる希土類元素の定性分析を行うための小型装置の作製を行った。電子源には3×3×5 mmの焦電結晶を用い、USBで駆動する小型分光器を用いることで、装置をポータブル化することができた。この装置を用いて、希土類鉱石であるジルコンを分析したところ、数~数百 ppm含まれる希土類元素(Sm, Tm, Tb, Dy, Er)を検出することができた。また、分光器の代わりにCCDカメラを用いて、複数の希土類フッ化物の発光を同時に撮影したところ、発光色の違いからそれぞれの希土類フッ化物を識別することができた。この装置は、鉱山で希土類元素を含む鉱石を識別したり、リサイクル現場で希土類元素を含む磁石などを識別したりするための小型装置として応用できると考えている。
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