研究課題/領域番号 |
24760617
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
小澤 俊平 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80404937)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 表面張力 / 高温金属融体 / 酸素分圧 |
研究概要 |
溶接等の自由表面を有する高温融体プロセスを最適化するために,マランゴニ対流の駆動力となる表面張力の正確なデータが必要である.本研究では合金融体の表面張力に対する構成元素の活量係数,酸素吸着反応の平衡定数,酸素親和性などの影響を明らかとすることを最終目的としている.これを達成するために本年度は,以下を行った. (1) 表面張力測定で重要となる雰囲気酸素分圧について,気化器で発生させた水蒸気と水素を混合することによるガス平衡と,ジルコニア式酸素ポンプによる制御の二つを検討した.水素/水蒸気によるガス平衡では,実現可能な流量比の関係から,酸素分圧と温度範囲に制限があるものの,雰囲気酸素分圧を精度良く制御できた.一方酸素ポンプを用いた場合は,酸素分圧と温度の自由度は前者よりも高いが,高温では不純物として含まれる水の解離の影響によって,酸素分圧が予想より低くなることが示唆された. (2)蒸気の水素/水蒸気によるガス平衡と,電磁浮遊炉を用いた液滴振動法を組合せ,ッケル融体の表面張力に及ぼす温度と雰囲気酸素分圧の影響について検討した.その結果,雰囲気酸素分圧が高い場合(1E-3Pa~1E-6Pa)は,低温では表面張力の温度係数が正となるが,高温になるとそれが負の値へと変化するブーメラン形の温度依存性を示す事を明らかにした.またこの測定結果から,酸素吸着反応の平衡定数,方差酸素吸着量を明らかにした.さらに,表面張力を温度と酸素活量の関数として記述する事に成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では,水素/水蒸気の混合比を変えることで,各種金属融体の表面張力測定で必要となる酸素分圧を制御出来ると考えていた.しかし,広い温度範囲において酸素分圧を制御する為には,流量比を大きく変えなければならない事が分かった.また,水素または水蒸気の混合量が少ない場合,それが表面張力測定に対して,十分に酸素分圧を制御できるかを計算では評価出来ないため,実験検証が必要である事が分かった.これらの理由から,予定していたよりも金属の表面張力測定が十分に行えなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度のニッケル融体の表面張力測定では,水素/水蒸気によるガス平衡を利用して,表面張力-温度-酸素活量の関係が明らかとなった.そこで,同様の測定を水素や水蒸気が少ない条件で行い,得られた表面張力を比較することで,雰囲気酸素分圧を制御しうる十分な水素,水蒸気の量を決定する.またその条件を利用して,銅,銀,鉄などの純金属融体の表面張力や,Fe-Al,Fe-Siなどの合金融体の表面張力測定を試み,表面張力に対する酸素や合金元素活量の影響について考察する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
雰囲気酸素分圧の影響を考慮した正確な表面張力測定を行うために,以下のように研究費を使用する計画である. 雰囲気酸素分圧を精密制御する際に必要となる高純度ガスを購入する.また,たとい酸素分圧を精密制御しても,材料中に不純物として酸素が多く含まれている場合,その影響によって,正確な考察を行うことが難しくなる.そこで,Cu,Ag,Feなどの各種高純度材料を購入する.さらに,電磁浮遊炉による表面張力測定で必要となる石英ガラス管や,薬品等の消耗品を購入する.また,市販の高純度ガスをさらに精製するために,高性能ガスフィルタを購入する. また,申請者の所属する千葉工業大学では,実験後試料の組成分析装置を有していないため,外注するための分析費用として使用する. さらに,本年度得られた研究成果を国内外の学会で発表する為の旅費や,英語論文を英語母国語者に校正依頼するための費用とする.
|