研究課題/領域番号 |
24760617
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
小澤 俊平 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80404937)
|
キーワード | 表面張力 / 高温金属融体 / 酸素活量 / 合金融体 |
研究概要 |
溶接や鋳造などの高温融体プロセスの最適化や現象解明のためには,自由表面で発生するマランゴニ対流の影響を考慮することが必須である.マランゴニ対流は表面張力を駆動力としていることから,正確な表面張力データが必要となるが,これまでに報告された合金融体の表面張力に関しては,構成元素の表面張力の大小,雰囲気酸素分圧(酸素活量),合金元素の活量係数,酸素親和性などの影響を系統的に明らかとしたものは殆どない. 本研究では,合金融体の表面張力に対するこれらの影響を系統的に明らかにする事を最終目的としている.これを達成するために,本年度は以下について検討を行った (1) 合金融体の表面張力では,一般的に表面張力が小さい元素が表面偏析し,系全体の表面張力を低下させると言われている.この場合,通常,表面張力の温度係数は元素によって異なるため,ある温度で表面張力の大小が逆転し,表面偏析元素も入れ替わる可能性が考えられる.また表面張力温度係数は,測定中の雰囲気酸素分圧によって影響される.そこで,構成元素の表面張力の大小が現実的な測定温度範囲で逆転する合金系を探すこと背景として,ニッケル,銅,チタン融体の表面張力測定を行った.これにより,ニッケルおよび銅融体の表面張力に及ぼす酸素分圧と温度の影響を明らかにした.またチタン融体においては,従来の報告よりも300Kも高温までのデータ取得に成功した.またこれらの組み合わせでは,表面張力の大小を逆転させる事が難しい事が分かった. (2) 雰囲気酸素分圧を考慮した合金融体の表面張力測定についての基礎データ取得の為に,雰囲気酸素分圧をパラメータとして,Al系合金の表面張力測定を行った.その結果,表面偏析元素の入れ替わりを確認する為には,より広い温度範囲および酸素分圧での測定が必要である事を明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では,現状達成しうる測定温度範囲において,酸素分圧を制御する事で,表面張力の大小が逆転する元素の組み合わせを見つけられると考えていた.しかし,酸素分圧を大きくすると,熱力学的予想に反して,酸化皮膜が生成する試料があった.これは,高純度材料を使用したとしても,ほんの僅かに含まれる不純物が影響したためである.
|
今後の研究の推進方策 |
25年度の研究から,合金融体の構成元素に関して,表面張力の大小を入れ替えるためには,より高温までの測定が必要である事が分かった.本研究で使用してきた電磁浮遊法では,従来の容器法よりも高温までの測定が実現できるものの,現状では加熱が不十分である.そこで,新たにレーザー加熱装置および光学系を,電磁浮遊装置に組み合わせ,より高温までの測定を計画している.なお,光学系は新たに構築する必要があるが,レーザー加熱装置は既に所有しているものを使用する. また25年度の研究では,高純度試料においても,ほんの僅かに含まれる不純物が,表面張力測定の妨げとなったが,これに関しては,より高純度の材料を入手したり,溶融凝固を繰り返した試料を予め作製し対応する予定である.
|