本研究では、1500K以上の高融点物質を対象とし、その凝固過程における固相と液相の構造の相関を明らかにするため、放射光実験に最適化したレーザー加熱型ゾーンメルト装置を構築した。本研究で構築した装置を用いることにより、代表的な高融点物質であるアルミナ(融点2345K)のゾーンメルト状態を実現することに成功した。また、放射光X線を用いることにより、2500 Kにおける高温融体の高精度X線回折データを取得できることを確認した。さらに、チタン(融点1941K)をはじめとした高融点金属や、ジルコニウム合金などの高融点合金についても凝固温度近傍における構造データを取得し、固相と液相の構造相関を考察する上で有用な情報を取得した。 本手法を用いることにより、従来は無容器浮遊法でしか得られなかった精度に匹敵する液体構造データの取得に成功した。また、レーザー加熱を用いて局所的に融解することにより、液相だけでなく、固相および固液境界層における構造情報の取得が可能であることを示した。本研究の目的である固相と液相の構造の相関を明らかにするため、現在、構造因子および動径分布関数の解析を進めている。また、チタンの凝固界面近傍の構造因子について、安定相の析出領域近傍に準安定未知相の析出を示唆する結果を得ているが、再現性の確認および凝固域の厳密制御のための装置改良を進める。 今後は、本研究で新たに構築したゾーンメルト装置装置の高度化を進めるとともに、より多くの高融点物質について固相と液相における局所構造の相関について定量的な解析を試みる。
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