圧力応答性ポリマーは,溶液の圧力の上昇により溶解度が変化し,粒子表面における吸着形態が変化するという特徴を持つ.この圧力応答性ポリマーをナノ粒子スラリーに添加することで,粒子の分散・凝集状態を簡便な手法で的確に制御する手法の確立を目的とした.昨年度までに,分散剤としてポリカルボン酸アンモニウムを用いることで,圧力印加により分散剤の溶解度が減少し良分散状態のナノ粒子スラリーを凝集させることが可能となったため,本年度は逆に,凝集状態となったスラリーを再分散させる条件について検討した. 検証実験に用いる試料は,ポリマーについては,圧力印加により溶解度が上昇するとの報告のある,スルホン酸系共重合体を,粒子については,昨年度と同様に水篩により平均粒子径を50nmとしたアルミナ粒子を選択した.pH調整および分散剤添加により凝集状態となるように調製したスラリーに圧力を印加し,分散状態がどのように変化するかを観察した.その結果,分散剤を添加せず,pH調整により調製したスラリーでは,400MPaを印加してもスラリーは短時間で沈降,堆積し,空間率の低い堆積層が得られたのに,高分子分散剤を添加したスラリーでは,400MPaを印加すると,短時間で沈降,堆積はしたものの,充填率の高い堆積層が得られた.これらの堆積層を,超音波により再分散させたところ,pH調製により調製したスラリーは再び短時間で沈降,堆積したのに対し,ポリマーを添加したスラリーは分散状態を維持した.これらのことから,圧力応答性ポリマーを用いたスラリーの分散凝集制御は,ポリマーの末端官能基の種類を適切に選択することで,分散から凝集,凝集から分散と,自在に制御できることが明らかになった.
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