本研究では,従来技術では達し得なかったレベルで高い反応基質拡散性と触媒性能を両立させた反応デバイスを開発するため,マイクロチャネル壁面上にゼオライト微粒子を集積させた触媒材料を作製することを目的とする。 前年度は,石英製ガラス平板をカチオンやアニオン性高分子化合物で処理し,ここにゼオライトナノシートを集積固定化させることを検討した。本年度は,その検討結果を踏まえ,より簡便に調製が可能であり,また適用できる反応の種類も多いMFI型のゼオライトナノクリスタルをマイクロチャネルに固定化させることを検討した。さらに,マイクロチャネルを提供するモノリス体として,直状の規則的マクロ孔(直径約20μmのマイクロチャネル)を有するシリカマイクロハニカム体を用いた。ハニカム体の焼成条件,固定化に使用するゼオライト分散液濃度や固定化法など種々検討した結果,1273Kで焼成したハニカム体内のマイクロチャネル上に約11wt%のゼオライトを含浸法により集積固定化できることがわかった。種々の分析により,固定化されたゼオライト微粒子は,ハニカム体の細孔を閉塞することなく数層程度の厚み(数100nm)をもって固定化されていることが確認された。また,得られた材料中の酸点量を滴定により求めたところ,固定化されたゼオライト中に含まれる全酸点量とほぼ一致した。さらに,この固定化触媒は10kg/cm2の比較的高い機械的強度を有し,またモノリス内部に水を流通させた際,極めて低い圧力損失を示すことが確認された。以上の結果を踏まえ,得られた固定化触媒の流通系触媒反応への応用が期待される。
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