研究課題/領域番号 |
24760627
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 宣明 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (90437244)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スラグ流 / マイクロ流路 / 物質移動 / 数値流体力学シミュレーション |
研究概要 |
本年度はまず,流路サイズ,流量,温度条件,流路材料を変更してスラグ流が形成される流量領域,スラグ形成時の物質移動の進行度を評価した。 液液二相系の物質移動性能評価のモデル系として,ドデカン中のフェノールを水相抽出を行った。内径d のチューブを内径dTのユニオンティの入口と出口に接続し,フェノール(1000 ppm)が溶解したドデカンと蒸留水を流した。出口からの試料について,紫外光270 nmの吸光度からフェノールの抽出濃度を測定した。実験では水とドデカンの合流点から出口までの距離を0.3 m,流量比を 1:1とし,d(1.3-10.2 mm),dT(0.5-9.5 mm),液流量を変化させた。 測定したフェノールの抽出濃度Cから,物質移動容量係数Kaが算出される。循環頻度(U/(d+2l), U:線速,l:スラグ長さ)とKaの関係を整理すると,Kaは流路サイズによらず循環頻度の増大とともに向上した。また,d = 9.5 mmではスラグは形成しなかったが,それ以下の径でスラグ流形成限界流量は22(d = 1.59 mm),40(d = 3.00),78(d = 6.33) mL/minと内径とともに増加した。 d = 2.00 mmにおいて材質を変化させたときのQとKaから,ティとチューブの親水性,疎水性を統一するとスラグが安定しやすくKaも大きいことがわかった。親水-疎水またはその逆ではユニオンティでスラグの側面に形成された膜がチューブで失われ接触界面積が小さくなるためと考える。 温度を変化させて物資移動操作を行った場合,物質移動速度が温度上昇とともに下がった。これは平衡抽出率が下がり,物質移動の駆動力が下がるためである。また,温度によるスラグのサイズへの影響は小さいこともわかった。このことはANSYS FLUENTによる数値流体力学シミュレーションによっても確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究課題の平成24年度の進捗としては,申請書提出当初の計画をおおむね達成できていると考えている。 本年度の主な内容としては,流路サイズ,流量,温度条件,流路材料を変更してスラグ流が形成される流量領域,スラグ形成時の物質移動の進行度を評価することであった。 流路サイズと物質移動速度との関係は循環頻度という,この操作の特有の指標を導入して整理することができている。また,スラグ流を形成可能な流量と流路サイズの関係についても多数の流路径・流量条件での実験データが得られており,十分な知見が得られている。流路材料についても親水性のものと,疎水性のものでスラグ流の形成,とくに流路壁に液膜ができるかどうかが,この流れにおける物質移動操作に大きな影響があることを見いだせている。温度の影響についても,直接の温度分布の影響を実験的に見ることは困難であるため,数値流体力学シミュレーションを援用することで詳細な検討ができている。 以上の観点から,本課題の実験,シミュレーション,考察は十分に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は,前年度に引き続き,スラグ流の形成サイズ,物質移動速度,物性の温度依存性,操作条件の関係のデータを必要に応じて追加する。反応・流体の性質に応じた操作や装置設計に有用な指標(無次元数)を確定させていく。 上記が明らかになったところで,多段温度制御プロセスを構築し,温度の組み合わせの物質移動への効果や,スラグ流における伝熱性能を評価する。数値流体力学シミュレーションを援用して流動操作の工夫やスラグ形成への影響を詳細に検討する。 多段温度制御を効果的に行うために,熱交換流体を複数流すことが可能な微小流路デバイス部品を試作する。 これまでの知見を統合し,系の情報から,温度条件・装置条件などを決定できる,このプロセスの設計フローを確立する。複数の系で実験を行い,フローの有効性を検証する。 多段の温度制御が常に有効とは限らないで,どのような条件のときに適用できるかという範囲を明らかにすることも視野に入れる。また,適用系の探索も並行して続け,より適切な系での実施を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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