本研究は、Liイオン電池を代替する新規燃料電池として直接ギ酸形燃料電池に注目し、直接ギ酸形燃料電池の課題である時間の経過に伴う出力低下を抑制してLiイオン電池と同等のエネルギー密度の達成を狙ったものである。出力低下の抑制には2つのアプローチを用いた。ひとつ目は、新規電極構造体による空気極由来の出力低下を抑制するものであり、1時間で80%程度低下していた出力をから10%程度まで抑制することに成功した(平成24年度)。ふたつ目のアプローチとして、燃料極由来の出力低下因子である、触媒被毒を抑制するための新規触媒の開発を行った(平成25-26年度)。これまで、TiO2やSiO2といったナノ酸化物粒子には触媒被毒の抑制効果があることは知られていたが、酸化物を用いることによる電気伝導性の低下により高い出力が得られないことが問題であった。そこで、本研究ではこれら酸化物粒子の被毒抑制効果と電気伝導性をいずれも担保できるように、酸化物粒子をカーボンナノファイバーに埋め込む触媒担体を開発した。その結果、既存触媒の4倍に相当する触媒活性が得られ、活性維持率は従来の23倍以上に向上させることに成功した。しかしながら、これらを用いて直接ギ酸形燃料電池セルを作成したところ、わずかに出力低下の改善が見られたが、触媒評価で得られたほどの出力低下改善効果は見られなかった。今回用いた触媒は従来の粒子状触媒とは異なり繊維状触媒であったため、新たな触媒層の設計が必要であることを示唆した結果であり、今後はこれの最適化に取り組む。
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