多くのグラム陰性細菌は、アシル化ホモセリンラクトン(AHL)を介したクオラムセンシングにより病原性発現を制御しており、AHLを人為的に分解することで、クオラムセンシングの活性化が抑制され、病原性発現を阻害することが可能である。昨年度までの研究で、好熱性細菌Thermaerobacter marianensisのゲノム上に既知のAHLラクトナーゼ遺伝子と相同性の高い遺伝子(aiiT)が存在することを明らかにし、AiiTは実際にAHL分解活性を有することを明らかにした。本年度は、AiiTが耐熱性AHL分解遺伝子として機能するか詳細な解析を行った。昨年度構築したAiiTとマルトース結合タンパク質(MBP)との融合タンパク質発現系を用い、アミロースレジンカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりAiiTタンパク質を精製した。AHL分解活性は、一定時間内に分解されたAHLをHPLCにより定量することで行った。AiiTの至適AHL分解温度を調べたところ、既知のAHLラクトナーゼは至適分解温度が50~60℃付近であるのに対し、AiiTは70~80℃付近と非常に高いことが明らかとなった。次に、AiiTの熱安定性を調べるため、精製AiiTを様々な温度で10分間プレインキュベートし、至適温度付近での残存AHL分解活性を比較した。その結果、既知のAHLラクトナーゼは60℃付近のプレインキュベートでほぼ失活してしまうのに対し、AiiTは80℃のプレインキュベートでも50%以上の活性が残存していた。以上より、AiiTは耐熱性のAHLラクトナーゼとして機能することが明らかとなった。
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