研究課題/領域番号 |
24760644
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
谷野 孝徳 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50467669)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コプロダクション / 発酵 / 微生物燃料電池 / 酢酸 / 電力 |
研究概要 |
交付申請書に記載した平成24年度の研究計画に従い研究を実施し、以下の研究成果を得た。 微生物燃料電池(MFC)の負極槽内における酢酸発酵特性とMFCの電力生産特性の解明とを行った。発酵によって生産される酢酸の消費エタノール当たりの収率は好気発酵条件下と同等であり、電力をコプロダクションしても収率に影響しないことが明らかとなった。次に、バイオフィルムの形成が酢酸発酵に及ぼす影響を調査した。バイオフィルムの形成は酢酸生産速度を向上させる一方で、生産される酢酸の消費エタノール当たりの収率には影響を及ぼさないことが明らかとなり、MFC負極槽内での酢酸生産においてバイオフィルムの形成は重要であることを確認した。またバイオフィルムの形成はMFCの開回路電圧、最大電流密度、最大出力を向上さ、バイオフィルムの形成がMFCの性能向上においても重要であるが明らかとなった。また、MFC負極層体積当たりの酢酸生産速度、MFC性能の向上にはバイオフィルムが形成可能な負極電極面積が大きく影響することを明らかとした。 MFCの構成材料の検討として負極側と陽極側を隔てる隔膜の検討を行った。MFCで一般的に用いられるナフィオン膜に比べ安価で食品生産分野での使用実績を有する一価陽イオン交換膜ネオセプタ膜は、MFCに組み込んだ際にナフィオン膜に比べ内部抵抗が上昇してしまうものの、酢酸と電力のコプロダクションを目的としたMFCの隔膜として利用できることを確認した。 次年度に計画している負極電極材料として用いるカーボン材料表面のプラズマジェット修飾実験を円滑に遂行するためプラズマジェットを形成するための電極構造とプラズマジェットの形成条件を検討した。石英ガラス管の中心に電極を配置した電極構造を作成し希ガス単体に加え、酸素などの他のガス種を混合した気体を用いてプラズマジェットを形成させる条件を確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成24年度の研究計画に従い研究を実施し「研究実績の報告」の欄に示した研究成果を得ている。また本成果を学会発表3回、雑誌論文1報として発表しており、研究はおおよそ当初の予定通り進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した平成25年度の研究計画に従い研究を推進する。 電極材料として用いるカーボン電極表面へのプラズマジェットによる修飾が酢酸発酵性能ならびにMFC性能に大きく影響を及ぼすバイオフィルムの形成とMFC内部抵抗に及ぼす影響を検討する。プラズマジェットに用いるガス種として種々の気体を希ガスに混合したものを用いてプラズマジェットを形成しこれをカーボン材料に照射することで表面の修飾を行う。修飾されたカーボン電極を用いたMFCを構築し、MFC内部抵抗の軽減が可能となる修飾法と修飾によりカーボン材料の表面に負荷された官能基の関係を調査する。またMFC性能とバイオフィルムの形成に効果的と判断された官能基を高密度で付加するためのプラズマジェット形成ならびに照射条件の検討を行う。 正極電極の触媒として用いる白金について、酢酸発酵生産MFCで隔膜と複合体化した正極電極単位面積当たりの白金触媒活性を変化させ、通電時の正極電位を測定酢酸と電力のコプロダクションにおいてMFC内部抵抗を上昇させないために必要となる最小量の活性を明らかとする。 食酢・電力のコプロダクションに適したMFCリアクターシステムの構築を行う。本研究では負極槽体積あたりの負極表面積を大きくするために負極電極材料をカラムに充填したパックドベッドリアクター形式のMFCリアクターシステムを構築する。リアクターのカラム内に充填する陰極電極材料として安価な活性炭や電気伝導率が高いカーボンファイバーを用いた検討を行い、バイオフィルムが形成されやすく集電効率の高い素材とその充填方について検討する。また得られた実データを元としたシミュレーションによる最適化につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」が生じた理由として、平成24年度は本研究の一部を含む研究が財団法人の主催する単年度の研究助成金の交付を受けることができたため、これを白金材料やカーボン材料などであるため高価なMFC構成材料の購入に当てることで、科学研究費補助金にてこれらの購入に使用を計画していた研究費の一部を節約することができたことが挙げられる。財団からの研究助成の予定がない平成25年度には「次年度使用額」を高価なMFC構成材料の購入に当てることを考えている。「次年度使用額」を除く平成25年度に交付される研究費の使用計画としては、これら材料の購入費に加え、交付申請書に記載した平成25年度に開発するリアクターを低温に保つための恒温庫の購入、消耗品の購入、成果発表・情報収集のための学会参加の旅費、研究成果を英文雑誌などに投稿する際の英文校閲費などに使用することを計画している。
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