菌体内に磁気微粒子を合成する磁性細菌を利用した環境モニタリング技術の開発に関する研究を推進した。まず様々な重金属と半金属存在下で磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1の培養を行い、MIC(最小発育阻止濃度)並びに磁気微粒子合成能への影響を評価した。その結果、培養条件に応じて生育能並びに磁気微粒子合成能に固有の影響を示すことが確認された。これは重金属の細胞内への取り込みと磁気微粒子合成オルガネラへの取り込みにおいて独立した機構の存在を示唆するものであった。また同条件で培養された磁性細菌が合成する磁気微粒子内に、これらの重金属が選択的にドーピングされることが明らかとなった。また条件の最適化によりこれまでの微生物プロセスでは達成されていなかった高濃度の重金属をドーピング可能な条件設定の確立に成功した。ここから抽出された磁気微粒子は野生株とは異なる磁気特性を保持することが明らかとなり、生物プロセスにより合成された磁気微粒子の磁気特性をチューニング可能であることが示唆された。これらの知見は今後の磁気センサ開発において非常に重要な発見であった。また環境モニタリング技術の開発に向け、オンチップ型微生物センサを構築した。具体的にはメンブランフィルター上に微生物を固定化し、酸素電極による呼吸活性評価により微生物センサのプロトタイプを作製した。今後、これまでの研究開発で得られた重金属並びに半金属存在下で磁性細菌が合成する磁気微粒子の磁気特性に対する影響に関する知見と微生物センサ開発に関する知見を融合することで、環境汚染物質の高選択的バイオセンサが開発されると期待される。
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