研究課題/領域番号 |
24760648
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
栗田 弘史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70512177)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 核酸 / 分子コーミング / 1分子計測 |
研究概要 |
分子コーミング(Molecular combing)は、溶液中のDNA分子を均一に固体表面に伸張固定する手法である。本研究では分子生物学・ナノエレクトロニクスなど広範囲に応用可能なゲノムサイズDNA伸張固定・多検体同時解析・集積化を可能にする新規分子コーミング技術の開発を目的としている。分子コーミングにおいて、多検体同時解析・集積化のほか、再現性の低さが従来法の問題となっている。これらを解決するため、従来は気-液界面の移動に伴うDNAの伸張固定であったが、本研究では油-液界面の移動に伴う分子コーミング法を提案している。H24年度は、これまでにほとんど調べられていないこの現象について重点的に調べ、実現可能性を検証した。具体的には、まず試料・試薬使用量の低減・多検体同時解析の観点で有効な油中微小液滴に着目し、長鎖DNAを内包した油中液滴を用いた。DNAを内包した液滴を分散させたオイルをガラス斜面で滑降させて分子コーミングできるか検討したが、液滴とガラス表面の接触面積が非常に小さく、本研究で検討した範囲では長鎖DNAの伸張固定に適さないことが示された。そこで、基礎的な特性が解析しやすいように微細流路内部に単一の油-液界面を形成し、ポンプを用いてその界面移動速度を制御しつつDNAを伸張固定できるかどうか検討した。その結果、ある条件下で伸張固定可能であることが示された。また、微細流路中では界面形状がDNAの伸張方向に顕著な影響を及ぼすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、油中に分散させたDNA溶液を用いて油-液界面移動による分子コーミングが可能であるか基礎的検討を進めることとしていたが、検討した範囲では困難であることが示された。しかし、油中液滴で形成される油-液界面を微細流路中に形成した単一油-液界面に置き換えて検討した結果、DNAを伸張固定できることが示された。従ってこれまでほとんど調べられていなかった現象である油-液界面移動に伴うDNA伸張固定の可能性が見出されたことになる。また、集積化の観点で油中微小液滴の利用を考えていたが、微細流路を用いることでも集積化は原理的に可能であり、本研究で提案する手法の実現可能性が示されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度に引き続き微細流路中の油-液界面移動によるDNA伸張固定の基礎的検討を行う。界面移動速度、DNA溶液特性(DNA濃度、pH、塩濃度)、油-液界面特性(界面活性剤、界面へのDNAの吸着)、オイル特性(粘度、比重)およびガラス表面特性(親水・疎水)をパラメータとして分子コーミングを行い、蛍光顕微鏡観察によりDNA観察を行う。伸張固定された視野あたりの平均分子数・平均DNA鎖長を基に固定化効率や伸張の度合い(理論物理鎖長との比)・断片化の有無を中心に評価し、最適条件を決定する。また、微細流路中では水相と油相を区画化でき、かつ油相中でDNAに生化学的な変化が生じる可能性は極めて低い。最終目標である細胞からの巨大DNA引出と伸張固定を考えたときに、細胞の破壊・タンパク質およびRNAの分解・蛍光染色といった単位操作をワンポットで実現できる可能性が高い。その実現に向けて実験的な検討を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は当初計画通り、観察対象となるDNA試料調製のための生物試料・酵素・高純度試薬、ガラス表面処理で使用する高純度試薬、観察時に使用するカバーガラスなどガラス製品、オイル類など、消耗費に多くを充てる。ほか、学会発表旅費など成果発表に充てる。
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