研究概要 |
本研究では、scFvのハイスループット生産技術、固相リフォールディング技術とDNAアレイチップ製造に定評のあるインクジェットスポッティング技術を融合し、低コストかつ高感度な診断用抗体アレイチップの開発を行った。 ポリスチレン(PS), ポリメタクリル酸メチル(PMMA),ポリカーボネート(PC)から成る平板チップ基板を製造し、独自に単離した材料親和性ペプチドタグの分子認識メカニズムを解明した。その結果、PMMA親和性ペプチド(PMMA-tag)を融合したモデルタンパク質であるグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)は、PMMA基盤上にPMMA-tagを介した状態で高密度かつ高配向に固定化可能であることが明らかとなり、タンパク質固定化用タグとしてPMMA-tagの利用可能性を明らかにした。 さらに、PMMA-tagを融合させたscFvの効率的なリフォールディング技術を本研究において確立することに成功した。特に、PMMA-tagを融合したscFvは、見かけの等電点が大幅に低下し、その結果、弱アルカリ性のpHにおいて効率的にリフォールディングが可能であった。マイクロスポッターを用いてPMMA基板上にPMMA-tag融合scFv溶液をスポッティングしたscFv固定化アレイを作成し、抗原検出が可能かを検討したところ、PMMA-tagの介入によって大幅な高感度化に成功した。本件等によって、12種類の抗原結合活性が明らかなscFvをPMMA-tag化することに成功しており、その結果、PMMA-tagのscFvに対する広い汎用性が明らかになった。また、本研究において、PMMA基板上において、scFvを高密度・高配向・高活性に固定化した抗体チップの製造技術を確立することに成功した。
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