H24年度までにヒト骨格筋筋芽細胞群における骨格筋由来筋芽細胞と骨格筋由来線維芽細胞をそれぞれ高純度に培養・分離精製する技術を構築した.H25年度は線維芽細胞を筋芽細胞に混合することで収縮運動能を有する骨格筋組織の構築を試みた.しかしながら驚いたことに,筋芽細胞組織内に混ぜ込まれた繊維芽細胞は組織内に均一に混合された状態では存在し得えないことが生細胞蛍光染色による観察により明らかになった.筋芽細胞組織内における繊維芽細胞の挙動を明らかにするため,積層筋芽細胞シートを用いた.積層細胞シート内では細胞は組織内部での振る舞いを取るものの,組織としての厚みが薄いことから共焦点レーザー顕微鏡による細胞挙動の三次元的な観察が定量的に可能である.繊維芽細胞は,筋芽細胞組織内に低濃度(繊維芽細胞同士が連結していない状態)で存在すると直ちに組織の外部に遊走し組織から抜け出すという極めて特徴的な運動挙動を示すことが明らかになった.以上の知見は,細胞の自律的な遊走や接着(自己組織化現象)に基づく組織形成プロセスの実現において重要な知見を提供するものであり,その他の細胞種の組み合わせによる挙動にも興味が集まるところである. 上記の理由から,筋芽細胞と繊維芽細胞の比率を均一に変えた組織を作製し活性張力を増大するという当初の狙いは達成されなかったため,半導体歪計からの信号検出系の高感度化による張力測定を試みた.筋細胞に電気刺激を加えた時間を歪計測定データと共に正確に保存するようプログラムを改良することで,測定データの正確な積算が可能となり,相対的に測定ノイズを低減することで筋細胞が発する微細な張力を検出可能とした.本助成により達成された筋細胞張力測定技術は,骨格筋疾患に対する薬剤スクリーニングツールとして今後の展開が期待される.
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