研究概要 |
トール様受容体(Toll like receptor: TLR)は自然免疫獲得に関与する受容体であり、細菌,真菌,寄生虫,ウイルスなどの様々な病原体の構成成分を認識することで、これらの細胞内への侵入を感知し、抗体産出ならびに免疫細胞の活性化を誘引する。この中でも、トール様受容体9 (TLR9) はウィルスや細菌のDNAに高頻度に認められる非メチル化CpG配列を認識する受容体であり、人工的に合成した短鎖オリゴデオキシヌクレオチド (CpG ODN)もリガンドとして認識し、免疫を活性化することから、CpG ODNは免疫活性化剤として有望視されている。しかしながら、TLR9 は立体構造が報告されておらず、構造情報を基にしたリガンドの設計ができない問題点があった。そこで、本研究では、自然免疫において重要な役割を果たしているヒト由来TLR9CpG ODN認識部位を同定することを目標として研究を行った。H24年度はTLR1/2/3/4の立体構造からホモロジーモデリングによりヒトTLR9の立体構造予測を行い、CpG ODN結合部位を予測した。その予測を元に変異体を作成し変異体の機能評価を行った結果、H505, Q510, H530, Y554がCpG ODNの結合に関与していることを示した。H25年度はTLR3 の2 本鎖RNA 結合部位に相当するTLR9のN 末端にあるロイシンリッチリピートドメイン(LRR)1から7について、変異体を作成しTLR9の機能を調べることにより、N 末端LRRの重要性を明らかとした。本研究で得られた知見により、TLR9のCpG ODN認識に関与する部位が明らかとなり、本成果はTLR9の新規リガンド設計に応用することができる。
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