本研究では、テザーシステムの信頼性の高い伸展方式を実現することを目的とし、伸展時の動的挙動の数値解析および伸展機構の開発とその実験による評価を行った。伸展時のテザーシステムの挙動の数値解析では、テザーをばねで接続された質点としてモデル化し、さらに伸展抵抗を考慮した数値解析モデルを構築し、それに対して等速伸展および放出方式のそれぞれを適用した際のテザーシステムの伸展時の挙動を明らかにした。伸展抵抗は極めて微小であるため地上試験で正確に計測することは事実上不可能であり、さらに個体差のばらつきが大きいため再現性に乏しくなることは避けられない。したがって本研究では、設計可能なパラメータでは無いと解釈し、その影響を受けない等速伸展方式に着目した。伸展抵抗のばらつきを考慮した放出方式の数値解析により、伸展挙動を期待通りに再現することが不可能であり、放出方式では伸展の信頼性を保証できないことを明らかにした。一方、等速伸展の場合、伸展抵抗より大きな力でテザーを引き出して放出するような機構を用いることにより伸展抵抗を無視することができる。数値解析の結果、仮に放出初速度にばらつきがあった場合であっても、伸展抵抗のばらつきを無視できるため伸展時の挙動が毎回ほぼ同一となることを明らかにした。したがって、等速伸展では放出時の挙動の予測が可能であり、高い信頼性を保証することができる。次に、このような伸展を可能とする等速伸展装置の概念設計、試作および試験を行った。二つの超音波モータを並列に接続してテザーをリールから引き出す機構を構成した。これにより、一方の超音波モータに故障が生じても伸展を継続できることが期待される。故障を模擬した試験、およびテザーの張力変動を模擬した試験の結果、故障時にも伸展を継続できること、および張力変動が生じても伸展速度をほぼ一定に保つことができることを明らかにした。
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