研究実績の概要 |
最終年度は, 形状記憶ポリマー製部材の加熱方法として塗料状のヒーターを用いる場合の塗料塗布後の部材の粘弾性特性の変化とそのモデル化に関する実験的検討を行った. 実験は,引張試験機を用いて塗料層の有無による形状記憶ポリマー製試験片の応力ひずみ関係を計測することにより評価した. その結果, 塗料ヒーターが塗布された試験片では, 塗布前に比較し, 粘弾性モデルとして同定されたモデルから得られる応力緩和率や粘性の値に明確な相違があることが明らかになった. 研究期間全体としての成果として, 1)形状記憶ポリマーを用いた繰り返し使用可能な可変部材のコンセプトの提案, 2)膜面宇宙構造物のリンクル(皺)スラック(弛み)などの膜面構造に現れやすい挙動に対し, 形状記憶ポリマーの形状固定性と形状回復特性を活用した膜面内の張力制御および面外変形制御手法の提案とそれらの実験モデルによる実証, 3)形状記憶ポリマー部材の宇宙空間における加熱方法として実現性のある塗料状ヒーターを用いた加熱方式を提案し, その塗料塗布前後の形状記憶ポリマー部材の粘弾性特性の変化に関する知見を得たことなどである. これらの成果により, 本課題で目的とした繰り返し形状フォーミング可能な適応構造システムの基本的な構成と実現可能性が明らかとなり, 将来の宇宙科学ならびに工学ミッション創世に繋がると考えられる知見が得られたと言える.
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