研究課題/領域番号 |
24760664
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
稲澤 歩 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (70404936)
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キーワード | プラズマアクチュエータ / トレーリングエッジノイズ / 流れの不安定性 / 空力音 |
研究概要 |
本研究では,翼後縁から発生する線スペクトル空力音(トレーリングエッジノイズ)のより効果的な制御手法について,設置位置と形態を容易に変更できるプラズマアクチュエータを用いて風洞実験により調べている.特に,摩擦抵抗の増加を抑えつつ,空力音を抑制することを目指して,遷移境界層の安定化(層流化)を通したトレーリングエッジノイズの抑制に着目しており,これまで,表面埋め込み型の二次元アクチュエータにより,壁面ごく近傍にわずかな流れ(主流速度の4%程度)を誘起するだけで,境界層は著しく安定側へとシフトし,トレーリングエッジノイズを完全に抑制できることが示されている.平成25年度は,より少ない制御点(電極の三次元配置)で,空力音の制御が可能かについて焦点を絞り,プラズマアクチュエータの放電電極配置を変化させて調べた.流れは幅W(=8mm)の電極から局所的に生じさせ,これにより,局所的な縦渦が電極下流に誘起される.翼幅方向に電極の配置間隔Lを変化させて実験を行った結果,電極間隔がL/W=3以下では,二次元電極の場合と同様,暗騒音レベルまでトレーリングエッジノイズが抑制できることがわかった.ただし,制御に要する電力は二次元の場合に比べ約50%程度大きくなる.電極の設置間隔が大きくなると,制御効果は急速に減少し,L/W=80以上ではアクチュエータによる空力音の低減は見られない.また,空力音の抑制は,三次元電極の場合においても,逆圧力勾配が急増する直前の翼弦位置で適用するのが最も効果的であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,効果的なトレーリングエッジノイズ抑制手法とその物理機構の解明をプラズマアクチュエータを用いて明らかにすることを目的としている. まず,壁面からの突出しない平坦型アクチュエータを製作し,電極自身が境界層遷移に影響しない条件下で,流れの安定化によりトレーリングエッジノイズが完全に抑制できることを示した.また,より現実的な,少ない制御点での抑制効果(流れの三次元制御)についても調べ,局所的に配置した電極からの誘起流れでも,トレーリングエッジが抑制できることと,その制御可能範囲についての知見も得た. 以上については,当初の目的および研究計画におおむね沿っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,流れの受容性(前縁近傍)に対する制御の可能性について実験的に調べ,本研究で得られた知見から,壁面形状の工夫による受動制御の可能性について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,プラズマアクチュエータの製作が歩留まり良く確実にできるようになり,材料費が抑えられたため. 今年度は,より製作の難しい前縁近傍での電極設置を試みるため,その製作費用に充当する.
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