本研究では、近年、宇宙用電気推進の分野において実用化に向けた研究が進められている磁気ノズルスラスターと太陽風から磁気帆を介して推進力を得るプラズマセイルの推進技術を融合した「プラズマセイル-磁気ノズル複合推進機」を提案し、実証実験を行った。はじめに、提案した推進機の推進性能を最適化する為の3次元数値シミュレーションを行い、その結果を利用して、地上真空チェンバー実験による推力測定及び推進機の性能実証を行った。これまで、コイルのみが作る磁気帆によって太陽風から推力を得る手法では、十分な推力(イオンエンジンなどと比較)が得られない結果が出ており、磁気帆をプラズマ噴射等によって拡大する手法が考案されてきた。その手法の一案として、本プラズマセイル-磁気ノズル複合推進機が挙げられる。評価方法には、プラズマ中のイオンを粒子として、また電子を流体として取り扱う3次元ハイブリッド粒子モデルによる数値解析を用いた。数値解析では、磁気ノズルの強度、噴出させるプラズマの流量と温度をパラメータとして、推進機が得られる推力の最適化を実施した。その結果、磁気セイルの推力に対して、プラズマ噴出後の推力の比、つまり推力ゲインが最大24倍まで上昇可能であることを示した。地上真空チェンバー実験では、準備できるプラズマのパラメータに限度があることから、その範囲内のパラメータを用いた実験を想定し、その条件を用いた数値解析による評価を行った。その結果、実験パラメータを用いた評価では、約5倍程度の推力ゲインが見込まれることが分かった。同条件を用いた地上実験を実施し、推力スタンドによる直接推力測定を行った結果、磁気ノズル推力に対し約3倍程度の推力増加が見られた。また、動作中の撮像、磁場強度やプラズマ密度、温度の測定も同時に実施し、推進機の動作の原理実証を行うこともできた。
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