研究課題/領域番号 |
24760672
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
海老原 格 筑波大学, システム情報系, 助教 (80581602)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 水中音響通信 / マルチパス / ドップラー / アレイ信号処理 |
研究概要 |
本研究は音波を用いてワイヤレスに情報を伝送する水中音響通信に関するものである.特に浅海域での音響通信は水中ロボットの制御や海洋工事での映像伝送など多くの需要がある一方で,マルチパスやドップラー効果の影響により安定した通信の実現が難しいことで知られている. 申請者はマルチパスの影響を効率よく測定しながらメッセージの伝送を同時に行うマルチパス測定型多重通信方式を水中音響通信に適用することを提案してきた.本研究では伝送速度と伝送品質の改善を目的に,アレイ信号処理をマルチパス測定型水中音響多重通信に適用する.さらに,その効果を実証実験により確認することを目的としている. 平成24年度はアレイ信号処理をマルチパス測定型水中音響多重通信に適用し,その性能評価を行った.浅海域を伝搬し受信された信号はマルチパスの影響により大きく歪んでいる.マルチパス測定型水中音響多重通信は通信路のインパルス応答を受信信号から測定し,連立方程式を解くことで歪みの影響を補償する.まず単一の受波器を用いる場合,連立方程式が悪条件になる場合があり,それが通信品質の向上を阻む要因であることを見いだした.そして複数の受波器を用いることで連立方程式の悪条件を回避し,従来の通信方式と比較して同じ条件下で通信品質を大きく向上できることを水槽実験により確認した. さらに複数の送波器と複数の受波器を用いる多重入出力をマルチパス測定型水中音響多重通信に適用し,その性能評価を行った.送波器と受波器の間に存在する複数の通信路のインパルス応答を独立に測定できるよう信号設計を工夫することで,送波器の数に比例して伝送速度が向上できることを水槽実験により確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では伝送速度と伝送品質の改善を目的に,アレイ信号処理をマルチパス測定型水中音響多重通信に適用する.さらに,その効果を実証実験により確認することを目的としている.平成24年度はアレイ信号処理をマルチパス測定型水中音響多重通信に適用することで伝送速度と伝送品質が改善できることを明らかにした. これらの成果は第一の目的を達成していることから,本研究は概ね順調に進展していると思われる.なお,第二の目的である実証実験は既に準備に取りかかっており,平成25年度中に実施できる目処が立っている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は予定通りマルチパス測定型水中音響多重通信の実証実験を行う.港湾内に水中音響送受波器を設置し,水中音響通信を行う.これまで実施した水槽実験と異なり,船舶雑音,波浪,潮位などの影響が通信系に加わることで,実用に即した環境下での性能を評価する.これによりマルチパス測定型水中音響多重通信を用いた高速・高品質な水中音響通信を実現するだけでなく,当該通信方式を各種アプリケーションに応用していく上での基本的な知見を得る.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は研究成果投稿料(学術論文の掲載料)の請求が平成25年度にずれ込んだため,次年度に使用する予定の研究費が発生した. 平成25年度は上記を合わせた研究費を実証実験で用いる水中送受波器等,設備備品・消耗品の購入,国内および海外での学会発表のための旅費,本研究の成果を学術論文として社会に発信する際に必要となる研究成果投稿料に充当していく予定である.
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