ハイドロゲルを海水中で形成する水和型船底塗料を用いたときに現れる乱流摩擦抵抗低減効果を、高分子ゲルによる応力緩和作用と壁面近傍に存在する乱流渦の関係を、回転二重円筒装置を用いた室内実験と、直接数値計算(DNS)による数値シミュレーションから明らかにした。平成24年度は、室内実験では塗膜を付加した内円筒を任意の回転数で回転させて摩擦抵抗(トルク)を作製し、抵抗低減効果を評価できる実験システムを構築した。一方数値計算では平行平板乱流のDNSコードを作製し、壁面上で局所的なすべり速度を導入してハイドロゲル塗膜の応力緩和作用を考慮した計算を行った。その結果、壁近傍の渦スケールに対応した周期的なすべり速度を発生させることによって効果的な抵抗低減効果が得られることがわかった。平成25年度は、室内実験では作製した回転二重円筒装置の内円筒に実際に塗料を塗布し、通常塗料とハイドロゲル塗料の抵抗特性を評価した。実際に抵抗低減効果が得られることが確認でき、さらに表面粗度をなるべく小さくし、塗膜厚みのみ変化させた試験を行った。その結果、膜厚みを薄くしたハイドロゲル塗膜の方が抵抗低減効果が高いことがわかり、膜内部への流体透過性が重要であることが示唆された。この流体透過性の影響をさらに詳しく調べるために、流体が透過するような多孔質壁を持つ平行平板乱流の数値シミュレーションを実施し、膜厚みを系統的に変化させた解析を行った。その結果、多孔質壁の厚みが乱流境界層厚みと同程度になるときに抵抗低減効果が得られることがわかった。本課題で得られた知見を踏まえて、船舶の大きさや航行条件に応じて塗膜施工時の調整を最適化することにより、船舶の燃費性能向上が期待できる。
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