最終年度(平成26年度)成果 1.翼端渦キャビテーションによって誘起される船尾変動圧力の理論計算法の開発:前年度までに開発した理論計算法では、船尾変動圧力のうち、本研究が目標とする翼端渦キャビテーションによって誘起される成分が過小に評価されていた。その原因の一つは、船尾変動圧力の計算において、翼端部に生じる局所的なスーパーキャビテーションが重要であるにもかかわらず、これがモデル化されていないためであった。本年度は、翼端渦キャビテーションに加え、翼端部のスーパーキャビテーション計算法をも開発し、さらに、プロペラ後流渦変形モデルも理論計算法に組み込んだ。その結果、推定精度が大幅に向上した。 2.直進楕円翼の後流場計測:直進翼に与えた後退角とその翼端渦形成の関係を調査するため、直進楕円翼、及びこれと後退角が異なる直進翼を3種類製作し、翼端後流のPIV(粒子画像流速測定法)による流場計測を行った。後退角が大きくなるほど翼端渦の渦核域(渦核半径)が大きくなるというデータが得られ、1の理論計算法における渦核半径推定の簡易式に反映させた。 本研究の成果 本研究で開発した、キャビテーションによって誘起される船尾変動圧力計算法は、ポテンシャル理論の範疇であるパネル法に基づく手法であるため、CFD等の他の数値計算法に比べ計算時間が短い。それにもかかわらず、高次成分まで含めて妥当な結果が得られる実用的手法となった。高効率プロペラ開発において、船尾変動圧力の問題は避けられないが、開発したツールにより、プロペラ設計段階でその特性を精度良く捉えることが可能となった。また、適用範囲に限度があると考えられるパネル法について、前例のない応用問題に取り組み、成果が得られたこと自体、本研究の大きな学術的成果として挙げられる。
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