研究課題/領域番号 |
24760681
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研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
西崎 ちひろ 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (70570993)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 見張り支援 / レーダ画像 / レーダ画像処理 / 小型船舶 / 操船者 / 船舶運航 / 海上安全 |
研究概要 |
本研究は、衝突海難事故が多数発生している漁船等の小型船舶に対する見張り精度を向上させるため、すでに多くの船舶に搭載されているレーダに着目し、画像処理による小型船舶映像の抽出を目的として実施している。平成24年度の実施事項を下記に示す。 1.画像処理に用いるレーダデータとして、練習船に搭載されているレーダ装置から、瀬戸内海航行中に得られるレーダ反射信号データ(距離・方位の数値データ)及びレーダ画像データ(画面キャプチャデータ)を取得した。その他、練習船の動静データ、ARPA情報(自動衝突予防援助装置で計算される他船情報)及びAIS情報(船舶自動識別装置で受信される他船情報)等も同時に取得した。 2.操船者のレーダによる見張り作業間隔やその使用頻度を把握するため、レーダの使用頻度が増える霧中航行を想定したシナリオにおける、操船者の見張り作業観察・分析を実施した。その結果、ある想定シナリオにおける操船者のレーダによる平均的な見張り作業間隔・使用頻度を明らかにすることができた。 3. 画像処理方法等の調査を実施し、レーダ画像を1枚のラスター画像として扱い、レーダ反射映像のみを抽出するためのアルゴリズムを構築した。1.で取得したレーダデータを用いて画像処理を行った結果、レーダ反射信号(距離・方位の数値データ)を処理するよりも早い速度で、レーダ画像データ(画面キャプチャデータ)からレーダ反射映像の可能性が高い映像のみを抽出し、同時に各映像の特徴(面積・輪郭・重心等)を抽出することが可能となった。 平成25年度は、2.で明らかとなったレーダによる見張り間隔等をベースとして、画像処理アルゴリズムの修正・改良を行うと共に、小型船舶映像を含む船舶映像の抽出及び抽出結果の妥当性について検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、レーダデータの取得・操船者のレーダによる見張り作業間隔等の把握・レーダ画像を1枚のラスター画像として扱い、レーダ反射映像の可能性が高い映像のみを抽出、また同時に抽出した各映像の特徴を抽出するアルゴリズムの構築まで実施できた。現在は、操船者の見張り作業間隔等を画像処理アルゴリズムに埋め込む作業(アルゴリズムの修正・改良)を実施しており、抽出結果の評価及び学会発表については、平成25年度に実施する計画となっているため、おおむね研究計画通りに進んでいると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
操船者の見張り作業間隔等を画像処理アルゴリズムに埋め込む作業(アルゴリズムの修正・改良)が終了した後、連続したレーダ画像データ(画面キャプチャデータ)に小型船舶を含む船舶映像の抽出処理を行う。連続した画像処理結果を観察し、操船実務経験者が捕捉したARPA情報等と比較することで、小型船舶映像が確実に抽出されていることを確認、もしくは操船実務経験者・乗船経験のある被験者へ画像処理後のレーダ画像を用いたインタビュー調査を実施し、抽出結果の評価を行う。最終的に、小型船舶映像の抽出結果とその評価結果等については、学会発表及び論文投稿を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度からの繰り越し予算についての使用計画は下記の2点である。 1.平成24年度に購入した画像処理用デスクトップコンピュータにて、アルゴリズムの構築を実施しているが、連続したレーダ画像を処理するにあたり、処理速度が間に合わない場合には、平成25年度にコンピュータを追加購入し、物理的な並列計算での対応を想定している。 2.平成24年度に取得したレーダデータ以外のデータ(ARPA情報等)は、あくまで画像処理アルゴリズムに反映するための参考情報として取得したものであるため、小型船舶映像の抽出結果の妥当性を確認に用いる際、情報の不足が予想される。平成24年度は研究所の別の研究テーマと合わせて様々なデータ取得・活用できたが、平成25年度は繰り越した科研費を使用し、再度練習船にて確認用データの取得が必要となるため、旅費・データ保存用ハードディスク等の消耗品等の購入に使用することが想定される。 その他、平成25年度の予算は、学会発表や操船実務経験者等へのインタビュー調査等、当初計画通りに使用する予定である。
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