研究課題/領域番号 |
24760685
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
晴山 渉 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00451493)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地下水・土壌汚染 / 揮発性有機化合物 / 光分解 / バイオレメディエーション / 廃棄物有効利用 |
研究概要 |
本研究は、揮発性有機化合物(VOC)による地下水・土壌汚染の浄化法として、太陽光と廃棄物を利用したVOC分解反応と微生物を用いたVOC分解反応を組み合わせた新たな汚染浄化法を開発することを目的とした。平成24年度は、まず廃棄物としてヤマブドウ果汁残渣を用いて、その残渣中に含まれる有機酸と鉄イオンを用いたVOC光分解実験を行った。太陽光と同等の紫外線強度で、ヤマブドウ果汁残渣中に含まれる酒石酸と鉄イオンが存在する条件で、VOCを光分解可能であることを明らかにした。このVOC分解メカニズムは、酒石酸鉄錯体による光反応により、活性酸素が生成し、VOCを分解したものと考えられる。また、VOCの光分解には、ヤマブドウ果汁残渣の添加量、鉄イオン濃度、pHに最適な条件がある。これは、酒石酸鉄錯体の生成条件とほぼ一致することが分かった。本研究の光反応により分解可能なVOCは、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンであり、クロロエタン類、クロロメタン類は分解することが出来なかった。 次に、岩手・青森県境不法投棄現場の汚染地下水より採取した微生物を用いて、VOCの微生物分解実験を実施した。その結果、汚染地下水中に存在した微生物により、無機塩培地を用いることでベンゼン、ジクロロメタンの分解が可能であること分かった。また、本研究によって、このVOC分解微生物群活性化する栄養塩、温度、pH等の条件を明らかにした。 よって、これらのヤマブドウ果汁残渣から溶出する有機酸と鉄イオンによるVOC光分解とVOCの微生物分解を組み合わせることによって、複数のVOCに対応した処理方法となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、廃棄物中に含有する有機酸を用いたVOCの光分解と、VOCの微生物分解をそれぞれ検討し、それぞれの分解条件と分解メカニズムを明らかにすることを目的とし、平成25年度は、それらの分解処理方法を融合し、効率的なVOCの分解処理法の構築を目的としている。 平成24年度は、計画通り、以下の検討を行った。 まず、廃棄物として、ヤマブドウ果汁残渣を用いてVOC分解実験を行った。ヤマブドウ果汁残渣からは、主に酒石酸が溶出し、この酒石酸と鉄イオンが錯体を形成することにより、光反応を起こし、VOCが光分解されることを明らかにした。また、この分解反応の反応条件、分解メカニズムの検討を実施した。次に、岩手・青森県境不法投棄現場の汚染地下水より採取した微生物を用いてVOCの分解実験を行い、VOCが微生物分解されることを明らかにした。また、VOC分解微生物が活性化する栄養塩、温度、pH等の条件を明らかにした。 以上のように、平成24年度は、計画通り研究が実施されている。そこで、平成25年度は、当初の計画通り平成24年度に得られた研究成果を基に、廃棄物に含有する有機酸と鉄イオンを用いたVOC光分解法とVOCの微生物分解法の融合化を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、以下の研究内容を実施する予定である。 平成24年度の研究成果から得られた分解条件から、考えられるVOC光分解の化学反応式、および考えられるVOC微生物分解の化学反応式を検討する。また、この化学反応式を基に反応速度論的検討を行い、その計算結果を平成24年度の研究結果と比較検討を行う。もし想定した反応機構と研究結果とが合わない場合は、再度化学反応式を検討する。これを繰り返すことにより、反応メカニズムを明らかにする。反応速度論的検討を行うことにより、2つの処理方法が、同時行われた場合の実用性の評価を行う。また、その検討と同時にヤマブドウ果汁残渣を用いてVOCの光分解行われた後の廃液を用いて、VOCの微生物分解実験を実施し、平成24年度で実施した2つのVOC分解処理方法の融合が、可能か検討を行う。 さらに、上記の結果を基に、実際の汚染地下水・土壌を用いて、VOCの光分解と微生物分解の実証試験を行う。実験に用いる汚染地下水・土壌は、岩手・青森県境産業廃棄物不法投棄現場の汚染地下水を用いる。また、この汚染地下水・土壌を用いて分解実験を行うために小型の流通式のリアクターを作成し、実際に太陽光の下でリアクターに汚染地下水を流し実験を行う。これにより実用性の評価を行うともに、室内試験の結果と比較し、研究の総括を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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