研究課題/領域番号 |
24760686
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 浩之 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (60610178)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | グラウト / 数値流体力学 / 粒状体個別要素法 / 埋め込み境界法 / 国際情報交換 |
研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分の実現のためにはグラウト技術が必要不可欠であるが、グラウトの懸濁液の注入はセメント粒子と流体の複雑な連成現象であるため、そのメカニズムには十分に解明されていない部分が多く、実際の設計、施工に際しては多くの実績に基づき経験的に決定されているのが現状である。そこで、本研究では、粒子-流体間相互作用を厳密に考慮した粒子-流体連成解析コードの開発を行い、室内試験を対象とした数値解析を実施する。これにより、グラウト浸透挙動に大きな影響を与える目詰まり現象について、発生を誘引する要因の検討を行うとともに、目詰まり発生メカニズムを解明する知見を得ることを目的とする。 平成24年度は、研究の基礎となる基本的なCFD-DEMコードである粒子-流体間相互作用を考慮した新たな粒子-流体連成解析コード(CFD-DEM)の開発に成功した。 開発したCFD-DEMコードを用いて、単純な条件のもとでシミュレーションを行い、理論解等と比較することでCFD-DEMコードの妥当性および適用性を検討した。岩盤亀裂を模擬した平行平板定圧注入試験装置“short slot”を用いた室内試験を解析対象とし、実際に実験を行った研究協力者から実験装置や使用したグラウト材のデータの提供を受け、シミュレーションに用いる入力パラメータの決定を行った。その結果、粒子同士が接触してアーチ構造が形成され最終的に目詰まりが発生する過程を、開発したCFD-DEMコードにより検討することができた。さらに、粒子間に引力を作用させることにより、セメント粒子同士の凝集や沈殿といった作用を考慮した応用的な解析にも成功した。粒子間引力の存在により粒子が塊状に流動し、目詰まりが発生しやすくなることがわかった。 得られた成果は、国内外の学会において発表しており、国内会議での発表では優秀発表者賞を受賞するに至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
グラウト目詰まり現象の検討における当初の計画では、 平成24年度は新たなDEM解析コードの開発とその妥当性及び適用性の検討を行うことを目標としていた。上述したように、予定通りに基礎的な解析コードの構築に成功しており、基礎的な解析結果の報告に至っている。さらに、粒子間に引力を作用させることにより粒子の凝集や沈殿といった作用を考慮した、当初計画では次年度に予定していた応用的な解析にも成功しており,研究目標は十分に達成されていると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に開発、検証を行ったCFD-DEM解析コードを用いて、研究協力者であるDraganivic , Stille (Royal Institute of Technology (KTH), Sweden)が行った室内試験を対象としたより詳細なシミュレーションを実施し、室内試験結果との比較を行う。特に、グラウト注入における目詰まり発生に特に大きな影響を及ぼすと考えられるグラウト材の水-セメント配合濃度、粒子間摩擦係数に着目し、これらを変更したシミュレーションを繰り返すことで目詰まり発生を誘引する要素の抽出およびそれらが目詰まりの発生過程に及ぼす影響の度合いについて検討を行う。これにより、グラウトの最適配合,注入圧のデザイン(濃いものを高圧で注入するのがよいのか,低濃度でも低圧で注入していくのがよいのか,短時間にいかに多くのセメントを注入できるか)に関する知見が得ることが出来る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用分であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
|