花崗岩などの亀裂性岩盤を対象とした地下水流動評価や核種移行評価に際しては、亀裂を均質な平行平板に近似したモデルが一般的に用いられている。しかしながら、実際の亀裂の表面形状は複雑で開口部は不均質に分布していることから、亀裂の開口幅と透水量の関係が平行平板モデルから乖離することが多く報告されている。 一年度目の研究では亀裂内流動過程可視化システムを活用して、亀裂のせん断-透水同時特性試験を実施し、亀裂中の構造変化とチャンネル形成メカニズムを把握するとともに、チャンネル内の流れ・物質移動の不均質性を詳しく考察した。また、様々な表面粗さを持つ10本の表面形状プロフィールにおける流れの数値解析を行い、亀裂の表面粗度とレイノルズ数の影響を考慮した力学的開口幅と水理学的開口幅の関係式を新たに提案した。 二年度目の研究では前年度の研究を引き続き、複数の人工的割れ目を取り入れたガラス材を用いて、亀裂ネットワーク模型を試作し、着色したトレーサーによる室内透水試験を行った。そして、それらの数値モデルを作成し、ナビエ-ストークス方程式を解くことにより、特に亀裂の交差部で発生する流れの屈曲や渦の形成などの現象を詳細に調べた。実験結果と比較・検証して、亀裂の数(密度)、開口幅、連結性などの要素が亀裂ネットワークの透水特性に与える影響を考察した。また、音響透水トモグラフィにより計測した岩盤内の亀裂の幾何学的分布データに基づいて亀裂ネットワークモデルを作成し、前年度に提案した関係式をモデルに導入することで、亀裂の表面粗度がネットワークの水理・物質移動特性に対する影響を定量的に評価した。以上のことより、単一亀裂の複雑な内部構造および亀裂の空間分布特性の影響を総合的に考慮した岩盤亀裂ネットワークの水理・物質移行モデルを提案することができた。
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