研究課題/領域番号 |
24760691
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
阿部 淳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (70513604)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中性子回折 / AE信号計測 |
研究概要 |
本研究は、圧縮応力下にある岩石試料に対して、AE計測によるき裂発生位置の標定と中性子回折法を用いたひずみ測定を組み合わせる事により、岩石内部に発生した微小き裂まわりのひずみ分布を行い、岩石中にひずみが蓄積するメカニズム、およびき裂発生進展メカニズムの解析を目的としている。平成24年度は、AE計測装置の仕様を検討し、中性子ビームを用いないオフラインでのAE計測の予備実験および、シングルチャンネルでのAE信号測定と中性子回折パターンの同時測定を行った。さらには、オフラインにてマルチチャンネルAE計測装置を用いて、AE発生源の位置標定を行えるようにしている。 オフラインでの圧縮または引張り試験を行いながらのAE計測を行ったが、中性子実験施設特有の電気ノイズが検出されたため、このノイズの原因を追及するとともに、ノイズをカットするための対策を検討した。ノイズ信号源を特定することはできなかったが、ケーブルをシールドするなどのノイズカットのための種々の対策を施した。材料試験機などの機器の動作にともなうノイズが検出されないことも確認し、これらにより、強度試験下において、試料の変形、破断にともなうAE信号を検出することが可能になった。 また中性子回折パターンとAE信号の同時計測の結果、中性子回折法により鉱物結晶内にひずみが蓄積する様子と、AE信号から岩石材料内で鉱物粒子の破壊もしくはすべりにともなうと考えられるAE信号波形が観測された。このことから、岩石材料の変形には、鉱物結晶内に蓄積するひずみと鉱物粒子の破壊、滑りが関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度中には、圧縮試験を行いながらのAE法と中性子回折を用いた同時測定手法の開発、およびAE信号解析からき裂発生位置を特定し、き裂周りのひずみ計測を中性子回折法を用いて行う事を計画していた。 圧縮試験を行いながらAE測定と中性子回折測定を行うための測定システムを確立し、同時測定を行う事は可能になり、AE信号・中性子回折パターンを用いたひずみ解析を行うことが計画通り可能になった。 AE信号解析からAE発生源を特定することができるようにはなっているが、中性子実験のためのマシンタイムを獲得することができなかったため、発生したき裂周りに中性子を照射して、ひずみ測定を行うまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、AE信号解析によりき裂発生部位を特定し、中性子回折を用いたき裂周辺のひずみ解析を行う予定である。中性子実験のためのマシンタイムは限られた時間であるため、まずはオフラインでの予備実験を進める予定である。そのために、オフラインにて岩石の圧縮試験を行いながらAE信号測定を行い、AE発生源の位置標定精度を高め、き裂発生部位を特定できるようにする。さらには、き裂部位に中性子を照射できるようにするための手順、技術を確立しておく。 中性子実験施設のマシンタイムを獲得したら、岩石の圧縮試験を行いながら、AE信号測定・中性子回折パターンの同時測定を行い、き裂周りのひずみ分布を測定する。これにより岩石中にひずみが蓄積する様子、き裂が進展する様子を解析する。 本実験を遂行するには、中性子実験施設に課題申請書を提出し、マシンタイムを獲得する必要がある。これまで世界最高性能をもつJ-PARC/BL19「匠」での実験を続けてきたが、「匠」へ課題申請するユーザーは多数おり、マシンタイムの確保は困難であると考えられる。そこで、J-PARCでの課題審査が通らなかった時には、海外での中性子実験も視野にいれる。 加えて、これらの研究成果と、昨年度までの研究成果をまとめ、論文、学会等で公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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