平成25年度は,多孔質シリカビーズを担体として吸着材を開発することと,開発した吸着材についてその分離性能の評価をカラム試験にて行うことが課題であった。 Liの同位体分離能を有するクラウンエーテルとしてbenzo-15-crown-5(Merck Chemicals)を採用し,そのキシレン溶液を多孔質シリカビーズ(富士シリシア化学)の細孔内に含浸保持させることにより充填剤とした。多孔質シリカビーズとしては,平均細孔径が100 nmで,粒径が60,100,250 μmの3種類を用い,粒径が分離性能に及ぼす影響を考察した。これらの吸着材をそれぞれ,クロマト用ステンレスカラム(GLサイエンス,充填長25 cm,内径4 mm)に充填した。カラムの充填率(空隙率)は水の圧入により求めた。これらのカラムに,0.05 mol/LのLiCl溶液を0.25 ml/minの流量で通液し,流出液を一定時間毎に分取し,それらのLi濃度を原子吸光光度計(島津製作所,AA-6200)で測定することで,カラムに対するLi溶液の破過曲線を得た。破過曲線のモーメント解析により,平均滞留時間と分散の値を得た。分散の値は,粒径が60 μmの場合が最も小さく0.9 min2となり,吸着材粒径の増加とともに単調増加となった。カラムの理論段相当高さ(HETP)を藤根の式により見積もったところ,粒径が60 μmの場合においてHETP値が約0.2 mmとなった。HETP値は吸着材粒径とともに小さくなり,吸着材粒径を小さくすることで分離性能を向上できることが確かめられた。平成24年度に開発した解析手法により,HETP値の考察を行ったところ,本研究の条件では,粒内拡散の寄与は軸方向分散の寄与と同程度か,それよりも小さくなり,吸着材粒径を小さくした効果が十分に認められた。
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