研究課題/領域番号 |
24760699
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長谷川 真 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (00325482)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ制御 / リアルタイム制御 / プラズマ形状同定 / プラズマ定常維持 / 画像制御 |
研究概要 |
本研究は、球状トカマクにおいて重要となる、非誘導なプラズマ電流立ち上げ、及びその定常維持を実現させるために、基盤となるプラズマ制御手法の構築を行うことを目的としている。このために、プラズマの位置・形状を磁気計測信号等からリアルタイムに同定し、その位置・形状を制御する手法の開発を行う。また、プラズマ放電時の画像を制御システムに取り込み、画像データから磁気計測信号を推定することで磁気信号に含まれるドリフト成分を取り除き、プラズマの定常維持制御を可能にさせる制御の開発も行う。 まず、位置・形状制御について、他の多くのトカマク装置では、真空容器内に仮想的に設置された各点のフラックス値が同一になるように外部磁場コイルの制御を行うことで形状制御を行っている。一方、本研究ではプラズマのエッジ位置をリアルタイムに算出して、その近傍の外部磁場コイルを用いてエッジ位置を制御することで形状制御を行うことを特徴とする。前者は制御ループを速く実行できる利点があるが、後者の制御手法は、より直感的な制御を可能にする利点がある。この制御ループを開発し、実機に組み込んで制御を試みたところ、一部のエッジ位置の制御が可能であることを確認した。また一部のエッジ位置の制御では、エッジ位置を制御する際にプラズマ電流など他のグローバルパラメータにも変化を与えてしまうために、有効なエッジ位置の制御が行えなかったことを確認した。これは、エッジ位置の制御単体でなく他のグローバルパラメータも同時に制御する手法が必要であることを示唆している。 このリアルタイムによるエッジ位置の算出は、プラズマ電流を一本のフィラメント電流と仮定して計算した簡易的な手法であるが、本研究では、プラズマの力学的平衡の式を用いて、リアルタイムにプラズマ形状を算出すること、更にプラズマ画像を制御に取り込むこと等が含まれており、これらについては後述する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズマの力学的平衡の式を用いてプラズマ形状の算出を行うことについては、既に開発済みのオフライン用平衡計算コードの抜本的見直しを行い、特に実行時間を速めるためのチューンアップをして、新たに制御用の平衡計算コードとして開発を行った。結果、この制御用平衡計算コードは、プラズマ制御システムのQuad Coreの一つのコアを用いて、30×48のメッシュ分解能にて、一回の計算に要する時間を1.6msec程度に収めることができた。この計算時間は、外部磁場コイルを駆動する電源の応答時間である1.3msecよりも若干長いが、充分実用範囲内に収まっている。この計算コードは、Quad Coreの利点である並列処理の技術を用いて実行されるので、別にある主制御ループの実行速度を下げることなく処理される。 また、制御システムに画像を取り込むためのハードウェアのセットアップを行い、画像を収集するソフトウェアの開発を行った。更に、実機にて0.5Hz程度のサンプリング周波数で画像収集が行えることを確認した。これは、磁気計測信号の補正を行うためのものであるため、1Hz前後のサンプリング周波数で充分である。また、画像を収集するコードも並列処理されるため、主制御ループに影響を及ぼさないで実行される。また、プラズマ形状から、各磁気センサで計測されるはずのフラックス値を逆算するコードも開発を終えている。 一方、本研究課題での現状の未達部分として、開磁気面のプラズマ電流を含んだプラズマ平衡をリアルタイムで計算するコードの開発、及び、収集した画像からプラズマ形状を検出するコードの開発があげられる。ただし、次年度に行う予定であった、実機を用いてのプラズマ形状の制御を先行して行っているので、若干実施内容の前後があるものの、本研究課題はおおむね予定通りの進捗であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法は、基本的に残りの開発要素を早急に開発し、その開発要素を実機に適用して、その有効性を確認することである。残りの開発要素としては、まず開磁気面におけるプラズマ電流を含んだ平衡計算コードの開発がある。ただし、これは基本的に、既に開発を終えた閉磁気面用平衡計算コードから必要のない個所、すなわち最外殻磁気面を探索するなどの個所を取り除いていくことで開発が行えるので、新たな開発要素は僅かといえる。また、収集したプラズマ画像からリアルタイムにプラズマ形状を検出するコードの開発も行う必要がある。 一方、既に制御システムでの画像を収集するコードの開発は終えていると記述したが、今回、この収集コードの開発に当たっては、National Instruments社製のライブラリを用いて開発した。このライブラリは、画像の収集が行えると同時に多くの画像フィルターを搭載しており、このフィルターを組み合わせることで、プラズマ形状の検出が可能であると考えられる。従って、自前で画像フィルターを作成する必要がないので、プラズマ形状の検出に関しても、開発要素は多くないと言える。 以上、残っている開発要素は僅かであり、この開発を早急に行い、実機への適用を行う。その上で、実際に適用することで明らかになる課題・問題点を明らかにして、更に改良を行い、より強固なプラズマ制御手法の構築を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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