研究課題
ITER(国際熱核融合実験炉)で用いられる大型のマグネットでは、直径1mm程度のNb3Sn超電導素線とCu線を、多数段にわけて撚り合わせ、さらに圧縮して金属のケースに収納する、いわゆるケーブル・イン・コンジット導体が用いられる。この導体の性能試験を強磁場中で行ったところ、コンジット内部で導体が偏り、空隙の空いた表面で素線が大きく曲げられて座屈する現象が確認された。Nb3Sn線は脆いため、座屈によって導体の性能が劣化することになる。この原因は、力の方向から素線とコンジットの熱膨張係数の違いに起因する収縮応力であると考えられていた。そこで本研究では、この問題を詳細に解析するために、まず初期の曲げ状態から熱収縮応力(軸力)によって、座屈に至る大変位挙動を2次元構造力学モデルによって計算し、CIC導体内部の素線の拘束条件を模擬した実験装置によって、その挙動を実験的に確認する事にした。両端の拘束条件は片端のみ自由端としたところ、座屈に至る大変位は熱収縮応力によって変位が可能であるという計算結果が得られた。このとき自由端が50μm動く必要がある事も明らかとなった。次に液体ヘリウム中で素線の平均接触長である10mmだけ他の素線(Cu)に囲まれ、最大電磁力に相当する圧縮力を印加出来る装置を開発し、熱収縮応力に相当する引張力を加えたときに圧縮部が滑る距離をレーザー変位計で計測した。その結果、最大電磁力では滑りが生じず、その1/10程度の圧縮力になったときに滑り始める現象が観測された。滑り距離の合計は約60μmを示しており、計算結果と良く一致することがわかった。これらを総括すると、CIC導体内部の素線座屈現象に関して、CIC導体の内部で生じている素線の座屈現象が理論的・実験的に解明されたと言える。今後の核融合マグネット建設において、極めて重要な知見が得られた。
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IEEE Transaction on Applied Superconductivity
巻: vol.24, no.3 ページ: pp.4801404
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