研究課題/領域番号 |
24760702
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
河村 学思 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70509520)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / シミュレーション / 周辺プラズマ輸送 / LHD |
研究概要 |
平成24年度の実施計画の通り、大型ヘリカル装置(LHD)の周辺プラズマ分布を一体として解くためのEMC3-EIRENE計算領域の拡張を行った。具体的には、以前からあるエルゴディック(エッジ/SOL)領域の計算メッシュに加えてダイバータレグ領域のメッシュを作成した。 メッシュ作成のための技術的問題解決のために、LHD形状に特化したメッシュ生成ツールが必要となるが、メッシュは人の手で逐一作るには複雑すぎるので半自動生成する手法開発を行った。エルゴディック領域・レグ領域(4ヶ所)のプラズマ領域と、それ以外の真空領域に分けてメッシュを作成し、境界で結合した。 ダイバータレグに対しては、基準となるポロイダル断面のみ手作業でメッシュ外形を与え、他のトロイダル角の断面については磁力線を追跡することで自動的に生成できる。真空領域については磁場と無関係に作れるので、境界線に仮想のポテンシャルを仮定してポアッソン方程式を解くことで等ポテンシャル線としてメッシュを与える方法と、初等的な幾何学的手法を使い分け、自動化を行った。 以上の開発を経て、エルゴディック領域とダイバータレグ領域のプラズマ分布の定常解が得られることを、核融合科学研究所のスーパーコンピュータで確認した。これらの成果によって、EMC3-EIRENEがLHDで周辺プラズマ解析に適用可能であることが実証され、また今年度用いた内寄せ磁場配位だけでなく、標準、外寄配位に対してもメッシュ作成できる見通しが立った。これは、25年度から計画しているEMC3-EIRENEを用いた解析の準備が概ね整ったことを意味し、物理研究や工学的応用へ道筋をつけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では24年度の計画として、計算領域の拡張とそれを用いた解析、閉ダイバータ構造への対応を主な計画としてあげた。計算領域の拡張については、周辺プラズマ全体を覆う計算メッシュ生成手法とツールを開発し、内寄せ配位に対して実際にグリッドを作成した。そしてその計算を行い、プラズマ中の中性粒子電離によるイオンソース分布が実験観測と定性的に矛盾しないことを確認した。 妥当性の検証には実際の放電で計測した密度や温度の分布をもとに比較をする必要があるものの、これまでに部分的な領域の計算ではあるがそのような検証を経ているEMC3-EIRENEコードを用いていることを考えに入れると、おおむね達成しつつあると言え、25年度に行う実際の解析を通して妥当性を確かな物にすることができると考えている。 また、閉構造ダイバータへの対応は現在進めているところであり、正確な壁形状を用いるには技術的課題が残っているものの、装置壁を小さく設定した仮形状での計算は正しく行えている。それによって、開構造と比べて中性粒子の電離が増えたためにリサイクリングフラックスが増加し、主にダイバータ領域での電子密度の上昇と電子温度の低下が示唆された。これは以前行った1次元による解析でリサイクリング率を増加させたときと同様の変化であることから、定性的には妥当な結果と考えている。閉ダイバータ構造の正確な壁形状を用いるための研究開発は次年度に持ち越しているものの、コードの有用性を示すことができ、大きな問題なく研究が進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度でEMC3-EIRENEコードによるLHD周辺プラズマシミュレーションの実現可能性が確かめられ、LHDプラズマの定常分布を得ることに成功した。25年度は2つの方向性で研究を行う。 1つ目は閉構造化ダイバータへの対応であり、プラズマの存在領域が現状の配位に比べてより外側まで存在する箇所があるため、計算メッシュの修正作業が必要である。そのために必要な方策として、LHDの磁場計算コードを開発している核融合科学研究所の鈴木博士に新たに研究協力の約束をいただいている。また、閉構造化ダイバータ配位でのEIRENEによる中性粒子解析シミュレーションを行っていた同研究所の庄司博士の研究協力も受ける。 2つ目は実験によるプローブおよび分光計測結果を用い、コードと実験のベンチマーク試験を行う。シミュレーションにはプラズマ輸送係数のようなモデル化パラメータあるため、ベンチマークを行うことでそれらを決定することができ、実際のプラズマと直接比較したり、加熱入力を変えるなどのパラメータサーベイが可能になる。直接的なプラズマ分布の比較に関する研究協力を当研究所の小林博士に約束いただいている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本科研費を用いて、25年度9月末にポーランドで行われるPET(Plasma Edge Theory)国際会議への参加を予定しており、“First EMC3-EIRENE simulations with divertor legs of LHD in realistic device geometry”というタイトルで24年度および25年度の成果発表を行う。発表内容は論文誌Contributions to Plasma Physicsへ投稿予定である。また、上で述べた研究の推進方策のために、IPP Greifswaldへの出張をPET国際会議後に行い、次の最終年度へ向けての共同研究を進める計画である。国内では、12月に開かれるプラズマ・核融合学会第30回年会で成果発表を行う。
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