研究課題/領域番号 |
24760702
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
河村 学思 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70509520)
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キーワード | 磁場閉じ込め核融合 / 周辺プラズマ輸送 / LHD |
研究概要 |
本研究計画の一つの目的は閉構造ダイバータの影響評価シミュレーションの実現であり、近年ほぼLHD全体に渡って導入された閉構造のプラズマや中性ガスへの影響がどのような形で現れ、計測できるかを知ることは非常に重要な課題である。これを実現させるため、平成25年度の実施計画に従い、EMC3-EIRENEコードに閉ダイバータを含めるための開発を行った。 CADに基づく閉ダイバータ構造をシミュレーション領域であるトロイダル角度18°で切り出し、周期性と対象性によってLHD全体を模擬できる壁構造データの作成を行った。そして、これによって、従来の開構造と新しい閉構造の両方を同一の計算メッシュで形状のみを切り替えてシミュレートすることが可能になった。 平成24年度に作成した計算メッシュの解像度を2倍にする改良を行い、開/閉両方の形状でシミュレーションを行ったところ、閉構造のドーム下部における中性ガス圧力は開構造時と比較して10-20倍の圧力になった。これは計測で得られた比率とよく一致する。また、一定加熱パワーでの放電立ち上げを模擬した電子密度スキャンを行ったところ、電子密度に対する中性ガスの変化についても、開/閉の両構造に対して計測とよく一致するスケーリングを得た。また、中性粒子の輸送がプラズマの及ぼす影響についての解析を行った。 この成果は、2013年9月にクラコフ(ポーランド)で開催されたPlasma Edge Theory国際会議でポスター発表を行い、Contributions to Plasma Physics誌に掲載が決まっている。また、2013年12月に東京工業大学で開催されたプラズマ・核融合学会年会で口頭発表を行った。また、共同研究として、LHD周辺プラズマ内部におけるダスト粒子軌道解析シミュレーションへのプラズマ分布の提供を行い、共著者としてITC国際会議のポスター発表およびPlasma and Fusion Research誌へ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度から持ち越していた課題である閉ダイバータ構造に対するシミュレーションを実現させ、計測との比較による検証を行った。25年度に予定していたプラズマと中性粒子の相互作用をグローバルな視点で解析する計画を達成した。すなわち、ダイバータ板で表面再結合することで水素イオンが中性ガスとなるが、開から閉への形状変更によって、よりプラズマに戻りやすくなり、それらがプラズマソースの増加を引き起こし、プラズマ密度の上昇と温度の低下を引き起こすことを示した。 中性ガス圧の計測との比較で、プラズマ・中性ガス相互作用シミュレーションの検証を行ったことで、周辺プラズマの輸送解析へのコード基盤を築き、国際会議と論文で主著論文として成果発表したことは計画に沿った着実な前進である。最終年度の計画にある不純物輸送に関する解析の準備を整えたという点は当初の計画通りの進展である。プラズマおよび中性ガスの装置内3次元分布は輸送を理解する基礎的情報であるとともに計測データの解析にも有用な情報であり、成果が共著者として共同研究を推進できた点は当初の計画を上回っていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度のコード開発により、EMC3-EIRENEコードによって開/閉の両構造でプラズマと中性粒子のグローバル輸送シミュレーションが実現され、中性粒子輸送に関するバリデーションを行った。次のステップとして、LHDに設置されている真空ポンプ、特にドーム構造下部のポンプがプラズマに与える影響を解析する計画である。これはダイバータの閉構造化の一つの目的であるため、実験に対して重要な示唆を与えることができると考えている。また、不純物(主にダイバータ板で発生する炭素)の輸送解析を行う計画を立てている。試験計算はすでに行っており、開/閉構造による不純物発生量の違いなどが見られている。 分光計測による不純物計測に関して、線平均された計測と3次元構造の得られるシミュレーション結果の比較によって、空間構造を加味した計測結果の解釈と、実際の分布によるシミュレーションの検証を共同研究を通して行うことで、より確かな解析を行うとともに、次へとつながる研究基盤が構築できるものと考えている。 また、不純物輸送と壁表面の損耗・再堆積シミュレーションコードEROを拡張子、EMC3-EIRENEのシミュレーション結果を使用してLHDダイバータ板周辺のシミュレーション解析を行う。 25年度から始めたダスト粒子シミュレーションに対する共同研究を推進するとともに、分光計測に関する共同研究を新たに始める。また、EMC3-EIRENEコードによる研究を核融合科学研究所で行うことを希望する研究者(大連理工大学)とコンタクトをとっており、ポスドクとして研究計画に参画してもらうことも含めて議論し、今年度から共同研究を開始する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
総研大若手教員海外派遣事業により、本補助金事業計画を補う共同研究の出張を行ったため、出張費用に残額が生じた。また、次年度にロシアで開催されるIAEA Fusion Energy Conferenceでの発表を新たに予定しており、研究計画に必要な出張費用としては過不足ない状況である。 2014年5月26-30日に金沢で開催されるPSI国際会議に出席し、共同研究者と議論を行うとともに、現在連絡を取っている新しい共同研究者と研究打ち合わせを行う。2014年10月13-18日にサンクトペテルブルクで開催されるIAEA Fusion Energy Conferenceで"Transport Simulation Analysis of Peripheral Plasma with the Open and the Closed LHD Divertor"というタイトルで本研究の成果をポスター発表する。EMC3-EIRENEコードに関するワークショップ(2014年6月末)に出席予定である。また、2014年11月18-21日に開催されるPlasma Conference 2014で成果発表を行う。前年度の成果に加えて、不純物輸送の解析を進めるため、Forschungszentrum JulichのDr. KirschnerおよびMax-Planck-Institut fur PlasmaphysikのDr. Fengとの共同研究を進めるための出張を計画している。
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